いのち

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いのち

「新しい父さんは、優しかった。でも、なんとなくウマが合わなくて」  郵便局近くの喫茶店。俺よりも大きくなった翔太と向き合い、とりあえずコーヒーを注文した。  翔太はカフェオレ。もうオレンジジュースではなかった。 「緊張しちゃうんだよね。『新しいお父さん』なんて言われても、すぐには馴染めなかった。  そのうち、馴染んだ振りをするのが上手くなっていった。笑顔を作ったり、時には胸に飛び込んだり。  でもそれはあくまでも演技。そうしなきゃいけないって思ったんだよね。本能かな」  翔太はカフェオレにストローを挿し、勢いよく2口飲んだ。 「…もう会ってくれないと思ってた」  俺は聞き取れるか取れないか分からないくらい、か細い声で言った。 「そんな訳ないじゃん」  カフェオレをコースターの上へ置きながら、翔太は言った。 「だって朱美が…」  翔太がそう望んでる。朱美は確かにそう言った。
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