いのち

2/4
前へ
/36ページ
次へ
「大人って、平気で嘘つくんだよね。まぁ、俺も新しい父さんには、ずっと嘘をついていたようなもんだけど」  翔太が組んでいた長い足をほどき、両足を地面に着いた。 「そんな訳ないじゃん。俺、父さんとの時間が一番楽しかったんだよ。ずっと…ずっと会いたいって思ってた」  翔太は前かがみになり、俺の目を見ながら言った。黒くてキラキラした瞳が、真っ直ぐに俺を見ていた。 「父さんからの贈り物が届くたびに、俺、安心してたんだ。あぁ、まだ俺のことをちゃんと想ってくれてるんだって。いつかは会えるんじゃないかって」  身体はもう十分に大人だ。立派な青年だ。身長も体重も、瘦せ型の俺よりもあるだろう。  しかし、心はまだ成長途中のようだ。その純粋さ。子供の頃のままだ。 「でも、いつまでもじっとしてたら一生会えないと思って。父さんから会いに来ることはあり得ないんだろうなって。  だから、待ち伏せした。たぶん近々、俺に送り物をするだろうと予測して」  翔太は俺から贈られてきたプレゼントの消印を見て、その郵便局に張り込んだらしい。  数日後、俺を見つけた。  そして、俺たちは今、ここにいる。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加