いのち

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「お前、これから…」  大学へ行くのか?それとも専門学校?  そんな言葉を、翔太は遮った。 「1つ、大事な報告があって」  俺は言いかけた言葉を飲み込み、翔太の言葉を待った。翔太はカフェオレをごくりと飲み、一つ息を吐いた。 「子供ができた。だから、働く」  は?  一瞬、時間が止まった気がした。カフェオレの氷が解け、ごとりとコップの中で形を崩すまでは。 「子供ができたって…お前…」 「父さんと一緒。できちゃった」  できちゃったって、まだ18の若者が父親に?俺でも22だったのに。 「血は争えないね。俺、やっぱり父さんの子だわ」  もう悩みに悩んだのか?そして、割り切ったのか?翔太はあっさり、そう言った。 「はは…」  俺は笑った。笑っていた。将来に対する不安、これから待ち受ける困難を思えば、笑う状況ではなかった。  でも、俺は笑った。そんな不安や困難を(あざけ)るように、その笑い声は店内に響いた。  焦って俺を止める翔太の顔がおかしくて、俺は高らかに笑った。
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