うん。それでいいかも

1/9
前へ
/36ページ
次へ

うん。それでいいかも

「パパ行くよー」  小2になった息子の翔太が、俺にボールを投げる。  よろよろと放られた球は、辛うじて俺の元まで届いた。 「ちゃんと届くようになったじゃん」  月に1度、俺は翔太と会っている。俺が望んだことではあるが、元妻の朱美も、それを望んだ。  俺に許された唯一の触れ合い。今日ばかりは翔太のわがままをめいっぱい聞いてやる。  自由な時間を求めて離婚したのに、息子には会いたい。わがままなのは、俺だ。  それでもいい。せめてこの時間だけでも、父親らしいことをしてやりたい。  俺にとっては、この上ない至福の時。  俺は翔太の胸元目掛けて、ボールをゆっくりと投げた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加