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私、除道切子の父親は開業医をしている。
外科手術もすごく腕が良いのだが、何なら、神の手とか言われるレベルなのだが、何故か精神科クリニックを。
父いわく、外科手術はすごく疲れるから、患者の話を適当に聞いて適当にアドバイスしたり薬を処方するだけの精神科が気楽で良いらしい。
おい、世の中の精神科医に謝れよ。
しかし、嫁の金遣いが荒いため、高額の報酬を得るために、たまに大きな病院でアルバイト感覚で外科手術をすることもあるのだ。
除道一族には外科医も多いのだが、その中でも父は飛び抜けて腕が良いらしい。
なので、国の有力者とかの失敗が許されない外科手術に父が呼ばれることがある。
そして、そんな父でも難しい手術の場合、父は私にオペを頼んでくるのだ。
16歳の引きこもりの医師免許もない女子に。
まあ、正確には父が切り開いた患部を偽看護師の私が触って取り除くだけだけど。
しかし、外科手術で切り開いた患部は内蔵や脳とかグロいのだ。
そんな患部を好き好んで触りたくもない。
しかし、我が家の家計のため、やらねばならぬ何事も。
あのクソ女のせいだ。
私がクソ女と呼ぶ女は私の実の母親なのだが、本当にクソなのだよ。
いわゆる金の亡者と言っていいかもしれない。
クソ女は異性を魅力する一族の生まれで、その能力で医者の父親をころっと騙して結婚したのだ。
そんなに金が欲しいなら、大金持ちの御曹司とかたらしこんだら良かったのに、父親の顔と声が好みだったらしい。
確かに私の父親はイケメンだ。今は46歳のおっさんだが、イケメンの面影は残っている。
それに、医者の嫁になればそこそこ贅沢できると思ったらしい。
だから、父親がいくら稼いでもクソ女が全て使うから、いつも我が家の家計は火の車。
そんな自業自得で苦労しているような父親が病に倒れたのは、私が14歳の時だった。
脳の腫瘍で手術は無理ですね。って。
余命半年らしく、父親が死んだら困る私は、私の隠していた能力で父親を治してやった。
外科手術なんぞ必要もない。父親の頭を私が触って念じるだけで、父親の脳腫瘍はきれいに消え去った。除去したのだ。
それを知った父親は、それから事あるたびに私を偽看護師として外科手術に同伴させ、私に患部を触らせて患者を治させるのだ。
こんなことなら、父親を治すんじゃなかったかなとか思うけど、私が成人するまでは父親に生きていてもらわないと困る。
あのクソ女が私の保護者とか恐怖でしかない。
で、私は今、父親の運転する車のリアシートに座っている。
大学病院へ向かうのだ。
「いやー、切子がドタキャンしないか心配だったよ」
「しないわよ、そんなの」
「だよな」
何なら今からしたいけど。
「昔はな、切子を乗せてドライブもできなかったもんだけど。こうして切子とドライブできるなんてな。父さんは嬉しいよ」
「さいですか」
そう。昔の私が車に同乗すると、その車は徐行しかできなかったのだ。
私の超能力みたいな除能力で運転手にアクセルを踏ませなかったらしい。
今は能力をコントロールできるから、私が同乗している車も普通に走れるけどね。
「なんだ、切子は嬉しくないのか?」
「わーい、楽しいなー」
「うんうん」
いや、まったく楽しくないし。
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