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私の名前は除道切子(じょどうきりこ)。高校へも行かずに自宅で引きこもっている16歳の女子なのだけど。 除道って変な名字だけど、柔道や書道のように除の技を使う家系なんだよね。 除って言うだけあって、除霊や除去、切除や排除とかの特殊な力を使える、いわゆる超能力一族なわけ。 まあ、除道一族でも力の弱い強いはあって、私の力は私の知る限り1番じゃね?って思ってる。 なんせ、除の力が強すぎて他人を勝手に私の半径1メートルから排除してしまうのだ。 私が産まれる時も、産婦人科医が私に近づけなくて外科医の父親が処置したくらい。 まあ、今は排除する力をコントロールできるよ。 でも、コントロールできだしたのは13歳の頃だから、私は保育園も小学校も行ってない。 だから、ついでに中学も行ってない。 小学校も行ってないのに、いきなり中学生デビューって無理ゲーだよね? で、こんな事を考えている私の前で頭を下げているお父さん。 娘に頭を下げて頼むくらいだから面倒な案件だ。他人なら私の能力で音も存在も排除するんだけど。 「なあ、頼むよ」 「あのね、お父さん」 「そうか、やってくれるか」 いや、そんな嬉しそうな顔をすんなし。 「……お父さんの職業は何かしら」 「そりゃあ、医師だ」 「私の職業は?」 「切子の職業?」 「そう」 「……無職?」 「正解」 「正解したから、やってくれるんだな」 なんでだよ。 「だから、私は中卒だし、医師免許も持ってないの」 正確には中学も1日も行ってないけど、卒業証書はもらえた。 「知ってるけど」 「だから、私は医師じゃないのに手術したら駄目だよね」 「でも、何回もやってるぞ」 「それは、どうしてもやらないといけない状況にお父さんがしたからよね?」 「だって、切子は失敗しないから」 「万が一で失敗したら、誰が責任を取るのかしらね」 「そりゃあ、父さんが……いやいや、切子は失敗しないから」 はあ、こんな会話は何度目やら。 「お父さん」 「はい」 「手術に絶対成功はありません」 「いや、しかし」 「それにね、大切な人とかならいざ知らず、見ず知らずの他人の身体を触るとか、もう勘弁してよ」 「おいおい、見ず知らずって、患者は大物の国会議員だぞ」 「知らないわよ」 「それにな」 「何よ」 「人類みな兄弟だぞ」 「お父さん、いつの間に80億人も子供を作ったの?」 「は?」 「人類がみな私の兄弟なら、人類みんなお父さんの子供よね」 「まさか。冗談は抜きにして頼むよ、緊急ですごく難しい手術なんだ」 「お父さんがオペしたとして、成功確率は?」 「奇跡が起こって5%かな」 おいおい、奇跡が起こるなら100%だろ。 「そう」 「うん」 「なら、お父さんが頭を下げて『私でも無理です。すみません』ってお断りだよね」 「いや、断れるなら断りたいんだが」 「だが?」 「母さんが前金を」 「まさか、また前金をもらって全て使ったの?」 「うん。正確には現在進行形で外国で使っている」 「あのクソ女、何してんのよ」 「おいおい、お前の母親だぞ」 「クソ女はクソ女よ。お父さんはクソ女に甘すぎ」 「切子」 「何よ」 「世の中には、何ともならない事もあるんだよ」 「クソ女と結婚式で交わした、絶対に離婚しませんの契約書のこと?」 「そう」 「はぁ。どうしてそんな契約書を」 「若気の至りかな」 「クソ女が肉親じゃなければ我が家から排除してやるのに」 「切子の能力でも肉親は排除できないもんな」 「そうね。で、我が家には大物国会議員に返すお金が無いのね?」 「そう」  「でも、お父さんの子供だから許してくれるかもよ」 「おいおい」 「はぁ。しかたないからやるけど」 「ありがとう、切子」 「分かってると思うけど、これが最後よ」 「分かってるよ。じゃあ、頼むな」 父親は部屋から出ていった。 いや、絶対に分かってないだろ。
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