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「ぇ……」
あ。
両手で口を塞ぐ。
びっくりして、声漏れちゃった。
「いるならさっさと取ってくれる?それ、ここじゃないから」
こっちも見ずに、机に叩きつけられたプリントを、早足で取りに行った。
仕分け、間違えちゃったみたい。
「あのねぇ、こんなことで手間かけさせないでよ。これくらいしか役に立たないんだから、お前」
謝りたいけど、喋っちゃダメだから、黙ってる。そんな俺を、それでも、1度も見ることなく、その人は舌打ちした。
「また右脚折られたいの??」
……いやだ。
ゆっくり、首を振った。見えてないだろうけど。
片脚が使えないと、少し不便だと思う。
左足だけでぴょんぴょん、学校の中で飛んでる自分、想像する。うん、すごく、目立ちそう。
目立つのは嫌い。
そう黙ってたら、もういいのか、その人は何も言わなくなった。
もっと慎重に、しよう。
と、決めて、また山を崩す。
その中で、準ハイド措置リスト
と書かれた書類を見つけた。
どこかで聞いたことあるかも……?
ハイド……て、なんだっけ。
やっと分かりそうな言葉が出てきたと思ったけど、思い出せなくて、がっかりする。
そうしてどんどん山を崩していって、時折お茶をいれて、というのをしていたら、さっきのように叱られることもなくって、無事にお仕事を完了することができた。
「ひま…………」
思っていたより早く終わってので、することが無くなって、お茶いれる部屋でぼーっとする。ここなら少し声を出しても、聞こえない。
「…………ヒロ、いるかな」
こうして連れ去られてしまって、結局また会えなかった。俺のこと、待っててくれたり、するかな。
最後に会った日、会いたいって言ったのは、俺なのに。約束、破っちゃった。
───どこに──────か
──は!?───────んなの!?
─────やっと──────ですか
退屈で、欠伸がもれてきたその時、バァン!と背後でドアが開いた。
「ちょっと、うるさいんだけど!?」
「あぁ…………こんな所にいたのか、帰るぞ」
「え……わわ、」
びっくりする間もなく、身体を持ち上げられた。突然の浮遊感に、目の前にあったものにギュッと抱き着くと、耳元で誰かがくすりと笑う。
「いい子だ。そうして掴まっておきなさい…………おい、そこをどけ」
知らない声……誰?
「いやいや、あのねぇ…急に来て扉壊しておいて何帰ろうとしてるの?あとウチの下僕を勝手に持って帰ろうとしないでくれる?」
「天使を迎えに来ただけだ。それよりも、ウチのだと?随分と巫山戯たことを言うな」
「てん………は?ほんとに意味が分からないんだけど。迎えに来たって、生徒会の下僕がいつから聖のモノになったわけ?」
「そうですよ、聖。百歩譲って、貴方が下僕を持ち帰るのは良しとしましょう。ですが、私達が仕事をしているところに突然やってきて、それを説明もなしに出ていくというのは如何なものかと思います」
「説明も何も、私は天使を迎えに来ただけだと言っているだろう」
周囲で繰り広げられる会話に、蚊帳の外の俺。
もう、訳が分からなかった。
ほんとに、この人は誰なんだろう。
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