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急な呼び出しだった。
『再開発計画が進んでいてね・・・』
母親の声にはどこか寂しげな声音に聞こえる。
『今度・・・。ウチの家がね・・・』
言葉に詰まっている様だ。
『もう、おばさん。電話貸して』
その声を聞いた時、どこか俺の心が弾んだ。
『もしもし、タク?』
「あっ?!さりな?何でウチにいるんだよ?」
どこか驚きを隠せない声で彼女の名前を口にしたが、実際のところ、彼女の声が聞けて嬉しく思っていた。
『タクがなかなか帰省しないから。おばさんが困っているって聞いたから』
『それだけで他人のウチに上がるか?それに、夏だって帰っただろう』
俺の心は喜んでいる。
嫌みでそう思ったわけではない。本郷さりなとは道を挟んで隣り同士で、幼稚園の頃から高校まで一緒だった。
『聞いてる?タクの家、立ち退きだってさ』
その声音には不満が込められている。
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