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高校に入ると。
桜の樹の下で俺達は将来の話をしていた。
『タクはどうするの?』
高校の学校帰り、桜の樹の下でよく、さりなと二人で話をした。
『母一人子一人だからな・・・。親父が早くに死んで、母さん一人でここまで育ててくれたからな・・・。恩返しをしなきゃ』
『ふ~ん。ちょっと意外・・・』
アヒル口をしたさりなは、本気で意外そうな口調で俺の顔を覗き込んだ。
『なっ!なんだよ』
幼馴染の見慣れた顔のはずなのに、この時ばかりは真正面から見る事が出来なかった。
『今の話、おばさんに話しちゃおう』
『おっ!おい!止めろ!』
さりなは葉桜になった桜の樹の周りを、子供の頃の様にグルグルと回りだす。
俺は彼女を追いかけ回すが、ある一瞬、動きに変化を付けた。
『あっ!ずるい!』
不貞腐れるさりなの顔に自分の顔を近づけながら、『ここが違うんだよ』とこめかみを突きながら自慢気に言った。
『ムカつく。おばさんにさっきの話ししてやる』
『おい!それだけはやめろ!』
『だったら』
さりなはこの時、意地悪な表情を作って振り返る。
『私の口、塞いでみたら』
彼女はニヤニヤとしながら、ジッと俺の顔を見つめた。
『わかった』
俺は自然な動きでさりなの体を抱きしめると、自分の唇を彼女の唇に押し当てた。
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