あと5分で咲く、恋の花

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中学2年の終わり、校庭にある一番大きな桜の木の下で、流星くんがひとつ年下の女の子に告白されてた。今日みたいに満開の桜が咲いていて、流星くんは照れくさそうに、彼女の肩に舞い降りた桜の花びらを手に取っていた、 それからずっと、流星くんはその彼女と付き合っている。もう2年になる。『美しい桜』と書いて、彼女は『美桜』って言うんだと、流星くんは恥ずかしそうに教えてくれた。 そのときに初めて気づいた、流星くんへの気持ち。恋に気づいたときと、恋を失ったときが同時だなんて、自分でも苦笑いするしかない。 そもそも、いつも当たり前に隣にいた流星くんが、私以外の人と歩いてる姿を想像したことなんてなかった。そこが私の居場所だったはずなのに、美桜はあっさりと私からその場所を奪って、中学最後の1年間は、私が流星くんの隣を歩くことはなかった。 同じ高校に入学して1年、また流星くんと並んで歩くようになって、忘れようと思っていた恋心が再燃した。流星くんが私の名前を呼ぶたびに、私の名前に彼女と同じ、『桜』の文字があるんだと思うと、堪らなく苦しくなった。 こんな風に、流星くんの隣を歩いて高校へ通うのも、あと残りわずかだ。もうすぐ美桜が、流星くんを追って、この高校へ入学してくる。 「なぁ、桜子」 私の少し前を歩いていた流星くんが、不意に立ち止まる。その背中を見ていたら、その後に告げられる言葉を、容易に想像できた。
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