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待て待て。
この後輩は私のパンツ片手にマスターベーションしてたのに、なんで平然としてるの???
キーボードを軽やかに叩く彼の横顔。
いつもならただの後輩として見る光景で、なんてことのない横顔だけど。
『せんぱい、だいすきっ、すきですっっ』
あの可愛い顔が、快楽に溺れた。
俗に言う『イキ顔』ってやつを間近で見てしまった。
私の推している『イツキ君』が目の前にいる。
彼が帰ったあと、私は速攻でイツキ君の配信チャンネルへ飛んだ。
後輩シリーズに出て来る彼の横顔がチラ見えするところを何度も観て核心を持った。
彼は紛れも無い、『イツキ君』だ。
彼が私の後輩になった日、どことなくイツキ君の雰囲気に似てる〜とはしゃいだことを思い出した。
無論、彼に『エロツイ主のイツキ君ですか?』とは聞けまい。
そういえば苗字も五木くんだ。
今更過ぎて全く気づかなかった。
配信動画ではカタカナ表記だったし、名前だと思っていた。
まさか彼の苗字だったとは。
「先輩、そんなに見つめられたら穴が空きそうです」
藍色の髪に隠れた耳。
耳朶に二つばかり穴が空いていることに胸の奥がキュンとした。
なんでなのかはわからない。
ただ、顔周りの髪が長くて、きっと誰も彼の耳たぶなんて気にして見ていないだろうと思ったら、なんだか特別な気がした。
「ごめん、埃がついてるから気になったの」
動揺した姿を見られないようにと、冷静な態度でしれっとそう返す。
「えぇ、いつのまに」
どこだろ?と髪の毛をわしゃわしゃと払っている姿をみて、思わず微笑む。
彼の肩口に手を伸ばして、小さな埃を摘みゴミ箱へ捨てた。
「わ、ありがとうございます」
「髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃったね」
ボサボサになった髪を見て、思わず願望が口に出てしまう。
「セットしてあげるよ」
「え?、、、へっ?!!」
すっとんきょんな声を上げた後輩は、目を大きく見開いていた。
「流石にその髪じゃ部長に言われちゃうよ」
ちょっと図々しいだろうか。
でも、憧れの推しに合法的に触れるチャンス!!!
五木さん、いやもうイツキ君に触りたい!!これはもう、下心以外なにものでもない!
少し恥ずかしそうに、イツキ君は遠慮がちに「じゃ、お願い、します」と唇を尖らせて呟いた。
ずっと髪の毛を触って見たかった。
大好きな推しの髪。
男の人に触るなんてあり得ないと思っていたけれど、五木さんだと思えば。
彼が手渡してきたワックスを手のひらに広げて練り、ニヤけてしまいそうになる頬と口元をしっかり力を入れた。
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