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ツイ主とやり取りが止まらない
「お疲れ様です。
経営企画部長の国司良太です。今日はお招きありがとうございます」
「同じく企画部の早乙女りりこでぇす。わーい、お酒お酒ー♡」
「隣部署の蝶野幸太郎です。
今日は残業無く完璧に終わらしたんで、飲みまーす」
錚々たるメンバーに固まる。
「え、なんでエリートな彼等がここに?先輩、サシで飲む予定では?」
しかもなんで経営企画部なの?!
水曜日。
今日は先輩とサシで飲めると楽しみにしていた。
残業なんてなってたまるかと、普段なら部長にゴマすりしたりするのをせずひたすら机に齧り付いて、先輩に割り振られる僕でも出来る雑用は全部引き受けた。
必死に頑張って、頑張って終わらせたのに、なんで男2人と女1人も呼んでるんですかっ。
る〜っと心の中で涙が流れる中、すみれ色の髪を纏めた先輩がいつもの仏頂面で言う。
「五木さん、この3人は先日の飲み会に参加出来なかったみたいなの。貴方の今後のためにもなるかもしれないから呼んでみたから、色々聞いてみるといいわ」
「知ってますよ!エリート集団です!なんでそんな顔が広いんですかっ?!先輩ほんと何者?!」
褒めたいのと問い詰めたいのと疑問がごっちゃ混ぜになってしまう。
蒸し暑くなってきた夏の始まりは、夜になるとまだ涼しさが残る。
そんな飲み屋街の小道で、どこに入るのー?と嬉々とした3人を引き連れた。
彼女は少し申し訳なさそうに眉を下げ、「同期なの」と呟いた。
「君が噂の“可愛い五木クン”だ!はじめましてー♡
新城ちゃんとは同期なんだー!元々は経営部にいたんだよ。不祥事のせいで異動&降格したから今は全く違う部署にいるけど、たまに新城ちゃんに経営部のこと相談してるんだ〜」
馴れ馴れしく先輩に抱きついた早乙女りりこは、茶髪の髪を編み込んだゆるふわ女子だ。
でも性格はサバサバしてそう。
「はぁ。先輩、経営企画部にいたんですか」
「こらこら、とりあえず店に入ろ。立ち話する話題じゃないだろう。憂里、予約した店どこかな」
サッと僕と新城先輩の間に入って来た国司部長は、優しい顔して言った。
だけど、優しい顔していながらも先輩へ送る眼差しは、知っているものだった。
程よい茶髪の好青年、自分よりも身長は高くて、目尻も下がっている絵に描いたような優男だった。
会社でも話題に上がるほどのイケメンで、仕事も出来る。
花形部署らしい国司良太は、どうやら先輩に好意があるようだ。
傍からみれば、美男美女カップル。
違和感なく馴染む先輩の肩をさり気なく寄せる国司良太は、他の社員と違って先輩のパーソナルスペースに入っていた。
「近い」
ベリっと国司部長の顔を容赦なく押し退けると、彼はにこっと笑ってあっさり身を引いた。
あぁ、先輩との距離感を近づけて、異性として見てもらうためにわざとアクションしている。
入社してからずっとガードが堅い先輩に何度も撃沈してきたのは、先輩が度が過ぎるほどに鈍感だから。
国司部長は先輩を狙っているのを僕にアピールしたんだ。
思わず顔が強張った。
「新人くん、彼女にあまりちょっかい出さないでね。また彼女が異動になったら困るだろう。
もう少し賢く立ち回らなきゃ」
明らかな敵視。
囁かれた声に、僕は動揺した。
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