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「で!クライアントにガツンと言ってやったの。“これは貴社が提案してきたのであって、我々はそれに則って行ってきました。ご納得頂けないようであれば、弁護士を返してご連絡致します”って。
あの時の国司部長カッコよかったぁぁ!
ドラマかよってくらいに決まっててさぁ、新城ちゃんにも見せてあげたかったよ〜」
りりこ先輩は特大ジョッキを頼み続けて3杯目だろうか。
企画部、ザルばっかしかいないことを把握。
3人ともケロッとしているのに対して、新城先輩はピッチャーを挟んでいた。
「いや、あれは俺じゃなくてもあー言うしか無かったと思うよ。」
「いえ!国司部長のあの怒った目、凄かったっス。男のオレでも惚れましたから、抱いて欲しいって思ったっス」
「やめろ、ゾッとした」
シャツのポケットにネクタイを入れ、3人の仲の良さにつられて笑う。
企画部、華やか部署とは聞いていたけど、こんなフランクだからこそ他部署と連携取るために色々頑張ってるんだなぁ。
自虐ネタをぶっ込まれると後輩の僕からすると返答に困るけど、助けるように新城先輩が鋭く「クドイ」「それは部長が悪いですね」「そこはもっと自分を磨いてください」と辛辣なほどに返していく。
先輩、国司部長に手厳しいなぁ。
普段の僕への接し方と少し違う気がした。
どちらかと言うと、最近の先輩はもう少し優しく。
「そうだ。昨日羽瀬さんが10月頃から産休に入ることになったんだ」
国司部長が思い出したように新城先輩にその話を振った。
羽瀬さんって、先月結婚したばかりじゃなかっただろうか?
「わ、てことは授かり婚だったんだね!やるなぁ羽瀬さん」
「りりこ、口チャック」
はーいと口元を押さえ、早乙女先輩はその話を前のめりに頷く。
「え、初耳っス」
「明日それをみんなに伝える話だからね」
蝶野先輩は驚いた顔をしたが、国司部長はのほほんと答える。
「じゃあ羽瀬が今進めてる企画どーするんスか?」
「あれは俺が引き継ぐことにしたから。で、同時進行している企画があって。
“人と街が家族になれる”というコンセプトで、商店街の人たちと協力して企画を盛り上げてるんだけど、その後任が決まってないんだ」
「え?!オレは無理っスから。今抱えてる企画デカいし、そんな余裕ないっス」
「アタシも無理無理!羽瀬さんの手伝いしに商店街行ったけど、頑固じじぃの集まり過ぎて纏められる自信ないもん!
企画が潰れそうな勢いだしさ〜。アタシ喧嘩腰になるから無理ー」
企画部も大変だなぁ。
それに比べて僕はまだ雑用ばっかりで何も出来ていない。
早く一人前になって、僕に任せてくださいとか言ってみたいなぁ。
「それを憂里に任せたいなって思ってる。どう?うちの企画部来ない?」
国司部長は僕を一瞥してから、僕にしか分からない笑みを浮かべた。
頭を使わないとって言っただろう?
まるで、そんな風に言ってるみたいだった。
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