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【イツキきゅん、その部長のこと苦手?】
新たに入ったコメントを見て、思わずドキッとした。
皆から見たらあのツイートは、『お酒が強い部長』に映えただろうに、そこまで察してくれるフォロワーがいる。
アカウント名[@隠れビッチとは言えない係長]さんからだ。
この人、イイネがほとんどだけど、たまに鋭いコメントしてくるんだよな。
【[@隠れビッチとは言えない係長]さん
コメントありがとうございます。
流石です。
部長は先輩と仲が良くて、、、後輩としてジェラシーです。】
ついコメント返してしまった。
他の人にも軽く返しておかなきゃ。
他の人に返信して、トイレを済ませて手を洗う頃に再びコメントが返ってきた。
[@隠れビッチとは言えない係長]
【後輩に気を遣わせるなんてダメな先輩ですね】
え。
あれ?そういうつもりじゃなかったのに。
【[@隠れビッチとは言えない係長]さん
僕がもっと先輩をフォローしてあげられないのが問題であって、先輩は悪くないので悪く言わないで下さい。】
送信ボタンをタップして、ため息を溢した。
[@隠れビッチと言えない係長]
【申し訳ありません。
でも、貴方が気に病むことではないはず。
イツキきゅんは、その部長と仲良くなって貰いたいと先輩は思っていたのに、当の本人が嫌がっていたのなら、それは先輩の責任です。
嫌なら席を離れることを先輩に伝えましょう】
思わずムッとした。
先輩のせいにしたいわけじゃないのに。
今はお酒も入ってるし、あとで返そ。
戸を開けると、紫色の髪を揺らした先輩が立っていた。
「あ、すみません、長々と使ってしまって」
やば。うんこしたって思われてるかな。
恥ずかしい気持ちが湧き起こる中、先輩は怖い顔して僕の顔をジッと見た。
「あ、あの?」
おろおろと心が焦る。
先輩は困ったように眉根を和らげ、「帰りましょうか」と口にした。
はい?
「あの3人がいきなり来て申し訳なかったわ。
疲れたんじゃない?」
「はえ?!
いえ、そんな!他部署とは良く飲みに行きますし、気にしないで下さい。
国司部長の話は魅力的ですし、早乙女先輩と蝶野先輩のタッグは見ていて面白いですし。
でも、あの話は断って良かったのでしょうか」
先輩にしてみたら元の部署に戻れるチャンスだ。
僕の世話係で燻っているような人じゃないことくらい分かっている。
社内に広がる先輩の功績。
飾られた賞状類を見てきた。
あの功績たちがあってもなお、陰口が絶え間ないのは、先輩が完璧過ぎて、自分よりも年下が功績を上げていく社員たちの妬みもあるのだと知った。
その上、先輩のあの男性に対する冷たい対応は好意ある社員には余計に堪えるのだろう。
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