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第61話 決着
ハヤテの体を引き裂こうと、迫るジャバラ。
その刃が体に突き刺さる寸前、ハヤテは顔を上げ、二本目の刀を抜いて、ジャバラの腕を一瞬で斬り落とした。
全ての腕を斬ったかに思われたが、一本だけ斬り損ね、その鋭い刃がハヤテの右肩に深く突き刺さる。
「たった二本の刀で、よくこの数の刃を防いだなっ!褒めてやるぞ!」
ハヤテは、何も言わずジャバラを睨み付ける。
「どうした。右肩が痛むか!このまま斬り落としてやるわ!!」
ジャバラが右腕を斬り落とそうとした瞬間、その腕は地に落ちていた。
「なっ、なんだ!こいつ!信じられん!右肩の傷はかなり深いはず!その状態でこの振りの速さ!しかも、顔色一つ変えんとは……。いかん早く回復せねばっ!!!」
ジャバラは腕を回復させる為、体力を使い息が上がる。
「フッフッフフフッ!私も体力を消耗したが、貴様もその出血だ。間もなく右肩は上がらなくなるだろう。利き腕をやられては、存分には戦えまい!」
「お前は馬鹿なのか?俺は左利きだ」
「もう少し、冷静に相手を観察した方が良い。お前は自分より強い相手と戦った事はないのか?ジャバカ」
「今のはわざとだな!わざと名前を間違えたなっ!!!許さん!許さんぞ!どこまでも人を馬鹿にしよって!!!」
ジャバラは二本の刃で突きを放つが、ハヤテは飛び上がり空中で半回転し、逆さまの状態でジャバラの背中を斬りつけた。
しかし、ジャバラは肩から生えた二本の刃でハヤテの刀を防ぐ。
「腕が六本もあるから、防がれて当然か。便利だな……」
「フハハハハッ!後ろを捉えたつもりだったのだろうが、残念だったな!私は四方全ての攻撃に対応出来る!私に隙は無い」
「隙は無いかもしれないが実力も無い。冷静さもな。後は観察力も無いかな」
「やかましいわーー!」
ジャバラは激しい連続突きを仕掛けてきた。ハヤテは六本の刃を防ぎ続けたが、右肩の負傷で防ぎきれず、右腿に突きを食らい、続けて右の脇腹を突き刺されてしまう。
「ジャバ子の攻撃は厄介だね……。一度に六本の刃で攻撃されたら、いくらハヤテでも防ぎきれない。今ならハヤテ一人に集中しているし、魔神銃で確実に倒せる!」
ルカは魔神銃に力を混めた。
「止めろっ!ルカ!邪魔をするなっ!こいつの相手は俺がすると言ったはずだ!」
「ほっとけよ。心配なのは分かるが、ハヤテが任せろって言ったんだ。俺を信じろってな。いつも助け船を出すだけが仲間じゃない。余計な事をしなくてもあいつは負けない」
「そうだね。そういえば、あいつは一対一でって言ってたもんね」
ハヤテは深い傷を負ったが怯んでいない。鋭い目で、ジャバラと激しい攻防を繰り広げている。
「ほう、それだけ傷つきながらも、戦意を失わないとはな。素晴らしい!素晴らしいぞ!だが、足の傷も深い!そう長くは動けんだろう!」
ハヤテの身のこなしは更に速さを増す。ジャバラの連続突きを刀で防ぎながら、真ん中二本の腕を斬り落とした。
ジャバラも負けじと下の腕で負傷しているハヤテの右腿を刺す。
同じ箇所をやられてしまったハヤテ。たまらず膝をつくがすぐに立ち上がり、ジャバラの腹を斬り裂いた。
真ん中の腕が無かったジャバラは、その素早い攻撃を防ぐ事が出来なかった。
ジャバラは上部と真ん中の腕を回復させていない。回復する体力が足りない様だ。やむなく下二本の腕で戦おうとしている。
「俺がどうやって火を持たず、戦火の中で怨魔を殺していたか見せてやる」
ハヤテは刀を✕字に構える。それを見たジャバラは小声で念仏を唱え始めた。
ハヤテはとどめの一撃を繰り出す為、飛び上がろうとするが、地面から怨魔が現れハヤテの右足にしがみつき動きを封じた。
動けないハヤテをジャバラの刃が襲う。体中を斬られてしまい、大量の血を流しその場に倒れてしまう。動きを封じられた絶望的な状況でもその表情は一切変わらない。
「お前!怨魔を呼んだんだねっ!卑怯だよ!ハヤテは一対一で戦おうとしたのに!」
「ガタガタぬかすな!小娘が!どんな手を使っても勝てば良いのだっ!勝ち方等どうでもいい!勝てば良いのだ!勝負は勝たなければ意味がない!」
「さぁ、小僧!終わったな!死ねぇっ!!」
ハヤテは怨魔に足を持たれたまま飛び上がる。
怨魔はハヤテの力を押さえきれず、足を持ったまま地面から出てきた。
その時
魔神銃・閃がハヤテの足にしがみついた怨魔を粉々にした。
「一対一じゃないから、良いだろ……」
ルカは二発目の魔神銃を放ち意識を失ってしまった。
魔神銃の閃光でジャバラは、一瞬目が眩む。
「くそっ!あの女、邪魔しおって許さん!この小僧を殺したら、次はお前だ」
ハヤテにとどめを刺そうとしたが、その姿は消えていた。
「どこだっ!奴はどこに……」
ハヤテは空中に飛び上がっており、着地したと同時に、ジャバラの体を✕字に斬り裂く。
傷から炎が燃え上がり、断末魔をあげる暇もなくジャバラは焼け死んだ。
「俺の狙いに気付かなかった様だな。無理してでも、上の腕を回復させておくべきだった。頭の悪い奴だ」
「大丈夫か!!ハヤテッ!!」
「あぁ、心配無い。急所は外れる様に避けた」
しかしハヤテの傷は深く、しばらく戦える状態ではない。
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