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第62話 最強の上級怨魔リンネ
「歩けるか?肩貸してやる。」
「すまん……」
「しかしお前、どうやってあいつを燃やしたんだ?火の出る様なもん持ってねぇだろ?マッチでも持ってるのか?」
「こいつ……。本気か……。本気でマッチで焼いたと思っているのか?顔が真剣だな……。笑わせようとして言っている訳じゃなさそうだ。傷が痛むのに笑わせ様とする訳ないか……」
「この刀だ。こいつは、閻天火という鋼で出来ていて、刀同士を擦り合わせる事で炎を発生させる事が出来るんだ」
「なるほど、そいつで怨魔を殺しまくってたのかっ!」
「あぁ、そういう事だ。この刀は師匠にもらった大事な形見でもあるんだ……」
「俺もその鋼で剣を作って欲しいな!イツキなら作れんじゃないかな。あいつ何でも作れるからな」
「一流の鍛冶屋でも簡単に作れる物じゃない。それにお前は一刀流だろう?炎を発生させるには、二本必要だ。それに閻天火は貴重な鉱物だから、そう簡単には手に入らない」
「なぁんだ。そうなのかっ!まぁ、いいや。とにかく傷の手当てが先だ。ルカも気を失ってしまったし、とりあえず車まで戻ろう」
「いや!ちょっと待てよ!それ、めちゃくちゃ便利だな!焚き火をする時、マッチいらないじゃねぇか。なぁ!もうマッチは必要ねぇって事だな」
「何故、そこまでマッチにこだわる……。もうマッチから離れてくれ……。人の大切な刀を何だと思っている……」
ハヤテにはもうツッコむ体力は無かった。
「すまない………。先にルカを連れて行け。俺は歩けそうにない。少し休ませてくれ……」
ハヤテも大量の出血で気を失ってしまう。
その頃
車ではイツキが懸命にミユを看病していた。
しかし、体の震えは一向に止まらない。
「ミユちゃん!大丈夫かい?」
ジャバラを倒し、危険は去ったはず。しかし、ミユは体の震えが止まらない。それどころか更に酷くなっている。
「どうしたのミユちゃん………。ルカ達なら大丈夫だよ!きっと悪い怨魔達を倒してくれるよ!」
「違うの……。まだ……、まだいる……。凄く強い怨魔が……。ルカ達がやられちゃう……。怖い……、怖いよぉ。もう、皆に会えないかも知れない」
「ミユちゃん、しっかりしてっ!皆、きっと大丈夫だから!また会えるよ。安心してっ!!!」
イツキの声は、ミユには届いていない。
「でも……、なんだろう。僕も不安感がある。三人共、無事ならいいけど……。僕が行ったところで足手まといになるだけだし、ミユちゃんを置いては行けない……。何よりも足が震えて動けない……」
その時、一人の女性がタケル達の前に現れた。
その女性は長い黒髪をなびかせ、黙ってタケル達を見ている。
「なんだお前っ?この街の住人か?それにしてもよく生きてたな。怪我はしてねぇのか……」
その女性は、背中に大きな斧を背負っていた。
「てめぇ、人間じゃねぇな……。悪いがこっちは怪我人がいる。先に治療させてくれないか。相手ならその後でしてやる」
タケルがまばたきをしたその瞬間、
女性は目の前にいた。大きな斧を横に凪払う。その振りは空を裂く音がはっきり聞こえた。
女性が怨魔だと気付いたタケルは、間一髪で斧をかわしたが風圧で胸の辺りから出血している。
「信じられねぇ……。あのバカデカい斧を、とんでもない速さで振りやがった……。こいつ、今まで会った怨魔とは明らかに違う。力もだが、恐ろしい殺気を感じる!」
「てめぇ!何者だっ!」
「私はリンネ。上級怨魔の中で最強の怨魔だ。ムドウ様から命を受け、貴様らを始末しに来た」
「上級怨魔で最強!面白ぇっ!!!面白ぇじゃねぇか!最近、俺の出番が無かったからなっ!久しぶりに本気でやってやるっ!相手に不足はねぇ!」
「私はダラダラ遊んでいる暇はない。一刻も早く、お前らを殺して、その女を連れて帰らなければならない。五体をバラバラにして運ぶつもりだったが、寝ているなら丁度いい」
「殺らせるかよっ!どうしてもってんなら、俺を殺してからにしやがれ!やれるもんならなっ!」
タケルは剣を握り絞め、先制攻撃を仕掛ける。リンネの頭を斬りかけたその時、斧がタケルを直撃する。どうにか剣で防御するも10メートル程、先の建物まで吹き飛ばされた。
大きな音を立てて建物に激突したタケルは、瓦礫の下敷きに。
「そんなバカなっ……。あいつ……、俺より動き出すのがはるかに遅かったのに……。絶対に当たってたはずの俺の攻撃より速かった」
「なんちゅう攻撃速度だ……。近づいて攻撃するのは危険だ……。反撃を食らってしまうだけだ……」
「やはり運び難いな。二つに斬るか」
リンネがルカの体を半分にしようと、斧を振りかぶったその時、二発の火炎弾がリンネを襲った。
弾丸は右腕に突き刺さり炎がついたが、軽く振り払って炎を消した。イツキの改造により、威力が上がっているはずの火炎弾でも全くダメージは無い。
「おいっ、まだ早ぇぞ!俺は死んでねぇんだよ!」
「お前、しつこい男だな。さてはモテないだろう」
「……………………」
リンネにまでモテないと言われたタケルは落ち込んでしまった。しかし、落ち込んでいる場合ではない。ルカが起きたとしても魔神銃は使えない。ハヤテも重症で気を失っている。
決定的な武器の乏しいタケルは、上級怨魔最強のリンネを倒す事が出来るのか。
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