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第63話 奥の手
「近づけないなら、離れて攻撃すりゃいいだけだっ!!」
接近戦を得意としているタケル。本意ではなかったが、リンネの斧攻撃を警戒し、銃での遠距離攻撃に戦い方を切り替える。
足、体、顔を狙って銃を撃つが、リンネは巨大な斧を振り回して銃弾を全て防いだ。
遠距離攻撃を得意としていないタケルは、リンネに全くダメージを与える事が出来ない。
「くそったれがっ!!全く当たらねぇ……。俺の体力があるうちに、あの斧を何とかしねぇと。このまま攻撃していても何の意味も無い。疲れるだけだ。弾も無くなっちまう!」
「そうやって、逃げ回りながら攻撃するつもりか?腰抜けが。お前、まさか私には遠距離攻撃が出来ないとでも思っているのか」
リンネが斧を下から上に振り上げると、その風圧がタケルのところまで飛んできた。
風圧は凄まじい衝撃でタケルの体に無数の傷をつけ、体を吹き飛ばした。再び瓦礫の山に激突し、大きなダメージを負う。
「あいつ、こんな攻撃をして来やがるのか!斧を振っただけでこの威力……」
息つく暇もなく、リンネの風圧攻撃が次々とタケルを襲う。タケルは素早くその場から離れ、難を逃れるが、リンネの攻撃が止む事はない。
凄まじい風圧は建物や瓦礫の山を次々に吹き飛ばしていく。
「まずい……。さっき食らった攻撃であばらがやられた。息が出来ねぇ……」
「どうした?手加減してやってるのにこの様か?私が怖くて、近づく事すら出来ないのか?逃げてばかりの負け犬めっ!お前の様な男を見ると、虫酸が走る。さっさと死ね。貴様には存在している意味等ない。何も出来ない弱い男よ!!!」
「あのくそ女っ!さっきから好き勝手言いやがってっ!だんだん腹立ってきたっ!」
「けど、あいつの言う通りだ。逃げてばかりじゃいつか殺られる。なんとかこの位置から強力な攻撃は出来ねぇのか……」
「そういえば!!イツキの奴、爆裂弾がどうのって言ってたな。なんて言ってたっけな?ちゃんと聞いておけば良かった……。一か八かこいつに賭けるしかねぇ!」
タケルは弾丸を爆裂弾に入れ替え、風圧をかわしながら走ってリンネに近付く。
「フッフッフッ!!私の挑発に乗ったのか?それとも、恐怖で気が狂ったのか?このまま斧で体を真っ二つにしてやる!!」
「くそっ!ダメだ!これ以上は近づけない!あいつを倒せる程の威力は期待出来ねぇが。やるしかねぇ!これで倒せなかったら、もう勝つ手段が無い!ルカを連れ去られて、皆も殺されてしまう!くたばってくれっ!化け物っ!!!」
タケルは、願いを込めて引き金を引いた。
とてつもない爆音と地響きが起こり、巨大な炎が上がった。銃を撃った衝撃に耐えられず、タケルの体も後ろに吹き飛ばされる。
その轟音は、街の外に居たイツキ達にもはっきりと聞こえる程のものだった。
「今の音は……。もしかして、タケル君が爆裂弾を使ったんじゃ……。そんなに強い怨魔と戦ってるの!大丈夫かな……。あの弾は二発しか無いのに、まさか雑魚怨魔に使ったりしてないよね。心配だなぁ……」
「イツキの奴、すげぇもん作ったな……。とんでもねぇ威力じゃねぇかよ……」
「てか、やったのかっ!あいつは、俺を攻撃しようとして斧を振りかぶってた!防御出来なかったはず!まともに当たったはずだ!さすがにくたばっただろう」
しばらく、炎が燃え上がり続ける。
リンネの気配は感じられない。殺気も消えている。
「後形もなく燃え尽きたか。爆裂弾が無かったらと思うとゾッとするな……。イツキに何か奢ってやらねぇと……」
「それよりさっさと、ルカとハヤテを連れて車に戻ろう……。ハヤテを治療してやらないと」
「待て……。どこに行くつもりだ……」
タケルが二人を抱え上げたその時、爆炎の中からリンネが現れた。リンネは斧を使い、とっさの判断で爆裂弾を防いだ。しかし、斧は見事に砕け散っている。
「くそっ!防がれたか!もうちょっと至近距離まで行くべきだったっ!!」
リンネは恐ろしい殺気を放ち始める。殺意に満ちたその目は赤く変化していた。怨魔には変化していないが、その威圧感は先程までと比べものにならない。
「まともに食らっていたら、どうなっていたか分からなかった。こんなものを隠していたとはな。少しお前を甘く見ていたよ。今から本気で殺らせてもらう」
「へっ!ガタガタうるせぇよ!てめぇの武器はなくなった!俺も武器は使わない!素手での殴り合いなら負けねぇ!どっちが先に降参するか勝負だ!」
並みの怨魔なら確実に倒せていたであろう、イツキの爆裂弾。しかし、リンネには通用しなかった。
残りの爆裂弾は後一発。タケルは素手で殴り合おうとするが、リンネの力に太刀打ち出来るのか。
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