第65話 絶望

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第65話 絶望

タケルの心臓を貫こうと、鋭い爪を伸ばして迫り来るリンネ。 タケルは左胸、心臓の位置にある内ポケットに、爆裂弾をセットした銃を入れている。リンネを道連れに自爆するつもりだった。 リンネは殺意に満ちた目で、タケルの心臓目掛けて爪を振り抜いた。 辺り一面に血が飛び散る。死を覚悟し目を閉じていたタケルだったが、爆発せず自分が生きている事を不思議に思いゆっくりと目を開く。 すると、リンネの爪はルカの掌を貫通していた。タケルの返り血を浴びたルカは目を覚まし、直ぐに立ち上がり爪を受け止めた。 e76f3502-69b7-4f56-a5d5-8c388574f696 「死ぬのはあんたの方だよっ!!」 ルカの拳がリンネの顔面を直撃。不意打ちを食らったリンネは瓦礫に激突する。 「余計な事しやがって……。もうちょっとで倒せるところだったのに……」 タケルは気を失ってその場に倒れた。 「それは悪い事したね!じゃあ、お詫びにあの化け物はアタシがぶち殺しておくよ!ゆっくり寝てな!」 d8a01a11-bb03-4247-a58b-d8f911e79079 「タケル……。全身の骨が砕けてる……。俺達を守る為に、殴られ続けたのか……」 「ハヤテっ!そういうあんたも傷が深いんだから、手を出さなくていいからね。アタシがやる!」 9561e97b-a389-4218-a8cc-e497dc8a3c29 「このクソガキがぁぁぁっ!起きやがったかぁ!大人しく寝ていればよかったものをっ!!殺してやる!殺してやる!」 ルカの攻撃をくらったリンネは、瓦礫の中で怨魔に変化し怨念と恨みを燃え上がらせていた。 リンネの凄まじい殺気を感じとり、ルカも怨魔に変化する。しかし、その足はリンネへの恐怖と魔神銃を使った疲労で震えていた。 3c4ca546-816a-4c87-b622-9a1916553789 「こいつ、恐ろしい殺気だ。今まで戦った怨魔と訳が違う……。全力でやらないと一瞬で殺られ……」 今度はリンネの拳がルカの顔面を直撃する。あまりにも速い攻撃で、全く反応出来なかった。この一撃でルカは気を失いかけた。 「なんて威力だ。タケルはこれを何十発も食らったのか……。怨魔になってもこの衝撃……。生身の人間が耐えられる様なものじゃない!」 d90430cb-9fcf-4e26-a7bb-f37e51574459 「シネェッ!シネェッ!ニンゲンモッ、ニンゲンニミカタスルヤツモ、ミンナシネェェェェェッ!」 我を失ったリンネの激しい攻撃がルカを襲う。 ca8494b5-a4b6-4c2f-b399-7f69b3e54fde 「くそっ!ダメだ!早過ぎてかわせない……。反撃する余裕がない!ガードするのがやっとだ。このまま受け続けたら腕の骨が砕ける……」 ルカは顎を蹴られ体が宙に浮き上がった。落ちてきたと同時に背中を爪で貫かれる。ルカのおびただしい血がリンネの腕を伝って、顔にまで流れる。 隙を見たハヤテが突きを仕掛ける。リンネは体を貫かれたにもかかわらず、何食わぬ顔をしながら、ハヤテに強烈な蹴りを食らわせた。 リンネはルカの体を貫いた右腕を引き抜き、ハヤテにとどめを刺そうと襲いかかる。 しかし、ルカが飛び蹴りでリンネの背中を攻撃し、ハヤテは事なきを得た。 ルカの不意打ちを食らったリンネは、その先にあった建物に激突。 153a119f-0a54-4ecc-9de1-b61c63fbcf45 「はぁ、はぁ……。大丈夫かハヤテ。アタシはもう魔神銃が使えない。何かあいつを倒す方法はないの?」 「俺が聞きたい……。ジャ……、名前を忘れたが、バカ坊主を倒した技も、負傷したこの足であいつの速さを捉えられるかどうか……」 「じゃあ、アタシがあいつを取り押さえるよ。あいつの動きを止める事が出来たら、すぐにあんたの技で攻撃して!」 瓦礫を払いのけ、リンネが立ち上がってきた。真っ赤な目で、ルカとハヤテを睨みつけている。 リンネは、二人が瞬きをした一瞬の隙に移動し、ハヤテの顔面を殴り飛ばす。そして、すぐさまルカに掴みかかり首元の肉を食いちぎった。 a77f491d-f64e-4688-8f45-f1b65a637135 「うわあぁぁぁっ!!!!」 「強い……、強すぎる……。こいつ、人間の時に何があったんだ。ここまで異常な殺意を持った怨魔。倒す術が無い……」 ルカはあまりの出血で人間の姿に戻り、しゃがみ込んでしまう。リンネに対して更に恐怖を覚え、その強さに絶望し戦意を失いかけた。 リンネはしゃがみ込んでいるルカに、追い討ちをかける。そのまま喰らい尽くしてしまいそうな勢い。 完全に我を忘れムドウ指示等、頭の片隅にも無い。 ルカが喰われかけたその時、目を覚ましたタケルが、リンネの足にしがみついて転倒させた。 「今だっ!!!」 1011bb7a-d546-4ccd-9118-f653bc278b15 「この一撃で仕止めるっ!これで気を失わせるくらいのダメージを与えないと、アタシ達も、ミユだって全員殺される!絶対にそんな事させない!」 ルカは気力を振り絞り拳に力を混める。その時、魔神銃から触手が伸びてルカの拳を覆った。 bb06f3a1-0626-4970-9871-284e645151a6 その拳はとてつもない威力で、リンネの背中を貫いた。リンネは口から血を吐き白目を剥いて気を失う。
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