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『……ま、……さま』
ぼんやりと霞む視界。
まるで高熱にうなされた時のように、体が熱い。それなのに、同時に寒い──そんな訳の分からない体調のために、思うように体が動かせない。
周りは明るいようだ──たぶん、目は開いているのだが、眼鏡が無いせいなのかあまりよく見えないし、感覚があやふやで、本当に目が開いているのかどうか──それとも脳内で合成された夢なのか──正直言ってどちらも自信がない。
『……ま、……ランさま』
耳元で、誰かが名を呼んでいる。
明らかに自分の名ではないのに、どこか、懐かしいような、声と名前──。
ああ、違う。違うよ。オレは──私の、名前は──。
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