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ドン、と腹に衝撃が走った。
「グッ」
内臓が圧迫され嗚咽と共に吐瀉物が
飛び散った。
石畳がドス黒い色に染まっていく。
グウェンの脳が強烈な危険信号を出した。
「あ、あ、」
這いつくばって路地から出ようとする。
が、息をつく間もなくもう一発重たい攻撃をくらった。
上目遣いに見上げると男はすっかり興奮した目で、次の一撃に向けゆっくりと腕を回している。
「因縁の小鬼じゃあなくても同じ種族なら誰だっていい。あん時の屈辱晴らさせろ」
「やめ、やめて……」
「カカカ……」
仲間の男達もにじり寄り、グウェンの両腕を吊し上げた。
「やっちまえ」
「どうする。遊ぶか殺すか」
グウェンは大昔街で人間に殺されかけたあの日のことを思い出した。あれから数世紀が経ち、どこか現在の人間に期待していたのかもしれない。
(ごめんなさい、オリバー王子、ごめんなさい)
思い浮かぶのは端正な王子の顔だった。
(オリバー王子に抱き締められた身を守れなかった)
迂闊に街へ繰り出してしまったことに後悔が募る。
「う''ぁッ」
ぎゅっと緑色の皮膚を面白そうにつねられた。
「ふん、思ってたより薄いな」
「…ハァ、ハァ……」
身体は既に限界で足元がふらついていた。
ボロ切れから太股が覗く。
それをじっとりと眺めるとリーダー格らしき男がグウェンの顎を掬い上げた。
「いい提案があるぜ」
するりと顔を撫で回す。
「うちのアジトで商売道具にするってのはどうだ?」
「おぉ!」
男達が一斉に歓声を上げた。
「ボス天才かよ!ふ、確かにゴブリンはうちの客に"需要"がありそぉだな」
「僕に…需要……?」
グウェンは声を震わせた。
「ぼ、僕なんかが、あなたたちの労働力の足しになるのですか…?」
「勘違いするな…。お前は今から俺達の"眷属"になるんだ」
グウェンは男の肩に担がれた。
「っ」
視界が反転し吐き気が再発する。
「従えば生かしてやる」
グウェンは男達に担がれ裏路地の奥へと連れ去られていった。
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