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「ストッーープ。アルベルト様は『仕方なく』私と婚約してるんだよ。時期をみて婚約破棄する事になってるし、ジェスター様は……」
お兄ちゃん達の暴走を止めるべく、会話に割って入った私は次の言葉に少し詰まる。
ジェスター様は……
「えっと……ジェスター様は良き友人。そんな関係じゃありません!」
私は少しもやっとした気持ちを振り払うようにビシッと言い切った。
そうよ。あの2人が私の事、恋愛対象にするわけないじゃない。身分、性格、外見、どれをとっても文句のつけようがないハイスペックな2人だよ?
自分の考えにうんうんと頷いていると、天兄はちらっと疑惑の目を向け、雪兄は小さく溜息を吐く。
なによぉ……その反応。
「お前、前世の時から眼鏡キャラ、好きだろ」
「ふぇ!? なに、突然。す、好きだけど……ジェスター様とは関係ないでしょ!」
「……誰もジェスターの事だなんて言ってない」
紫紺色と薄紫色の瞳が見透かしたように鋭く光る。
くっ、お兄ちゃん達の視線が痛い。
そりゃあね……黒猫を抱いていたジェスター様に初めて会った時、綺麗だなって思ったけど……さ。
「結婚……いや、彼氏、いやいや、お前に話しかけてくる男でもだ。そんな男がいたら、兄ちゃんに言うんだぞ」
「そうだぞ、美咲に相応しいか見極めてあげるから」
超イケメン2人に顔を覗き込まれるなんて、傍から見たらドキドキして失神しかねないシチュエーションなんだろう。けど、言ってる事は盛大なるシスコン発言。
お兄ちゃん達、邪魔する気満々じゃん!
「お前はお人好しで騙されやすいしな」
それは、まぁ、うん、否定はしない。
「俺と対等に剣を振るえる男じゃなけりゃ、大事な大事な妹はやらん」
そんな人、この世に存在しません。
「最低でも火あぶりと氷漬けと水責めに耐えうるぐらいの男じゃないと嫁にはださないよ」
それ、拷問だから。
「ズタボロになる覚悟がある男。話はそれからだ」
ヤ・メ・テ・ア・ゲ・テー
いもしない私の恋人に文句を言っているお兄ちゃん達を横目で見ながら(この世界では)弱冠13歳にして、私の恋がとてつもなく遥か彼方に遠のいたことを……悟った。
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