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食いつくように言う私に、彼はふわふわのひげをぴくりと震わせて微笑んだ。
「会えますとも。けれどそれは記憶の中の家族よりいくらか歳をとっていると思います」
「どうして?」
「それはこの後の君の記憶の中で知ってください。私にはそれ以上を教える権限がありません」
私達が話していると、傍に卵が現れた。
迷わずそれを割り、受け取った記憶の中で私はもう入退院を繰り返すほど具合が悪くなっていた。
「なんで少しずつしか記憶を返してくれないの?」
「人の記憶は膨大な情報量があります。君に映像として見えたのはそのほんの一部ですが、君の脳が受け取った情報量はそんなものではありません。一度に全てを受け取れば君の脳は混乱して、最悪壊れてしまう。だから少しずつ、時間を置いて返してゆく必要があったのです」
それがどうやら40分置きに卵が現れる理由らしい。
「だったら最初からそう言ってくれたら良いじゃない」
私が睨むと、彼は困った顔で首を傾げる。
「君は我々が思うその年頃の子どもよりも洞察力に優れた、賢い子だったんです。だからこちらとしてもアプローチの方法を変更しました。子ども向けのゲーム感覚でなく、より現実的な方法へ」
彼の言う我々が何かは、聞いても教えてくれないだろう。
しかしそれはおそらく、ここに私の記憶の入った卵を送ってきたり、アラームを鳴らした誰かの事だ。
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