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「アリス、落ち着いて聞いてくれ。お前の病気は今の医学では治せない。けれど3年後に承認される新薬ならば治療の可能性がある。でも、このままではお前の体はもたない」
お父さんは涙をこらえて、ベッドに横たわったままの私の手を取った。
「だから私達は……あなたを冷凍睡眠装置で眠らせて、延命したいと思うの」
そうだ、私は生存の可能性に賭けてコールドスリープに入ったんだ。
装置に入る日、4つ下の8歳の弟は泣いてばかりだった。
お父さんもお母さんもひどく泣いていて……
でも私は泣く元気さえもうなかった……
全てを見終わると、どこからともなく放送が始まった。
「全記憶の移管が完了しました。覚醒シークエンスに入ります。コンダクター時計ウサギ、個体識別名称『イースター』は至急メインコントロールエリアまで退避してください」
そうか……ここはコールドスリープの中なんだ。
「イースター、私はコールドスリープから目覚めるために記憶の返還が必要だったんだよね? コールドスリープって、記憶も凍っちゃうのかな?」
小さな違和感からそう訊ねると、ふわふわの可愛らしいうさぎは優しく笑った。
「アリス、私はここでお別れです。これで君はお家に帰れます。もう病気もありません。どうか幸せな一生を送ってください」
ふわっと辺りを柔らかなオレンジの光が包んで……目が醒めたらカプセルの蓋が開いたところだった。
「アリス!」
「ああ……アリス!!」
「お姉ちゃん!!」
イースターの言っていた通り記憶の中より少し歳をとった私の家族たちがそこに居て、私の目が開いたのを大喜びしてくれる。
「パパ、ママ、ルイス!!」
私達家族は抱き合って再会を喜びあった。
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