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Executions
本当に卵は探さずとも見つかった。
不思議なことに歩く先で爪先にぶつかったり、腰掛けた木の陰に置いてあったのだ。
どうしてこんなにも見えないのに見つかるのかが不自然な程で、踏みつけなかったというのも不思議だ。
不思議といえばこの草原を行く中で、イースター以外誰一人として人にも動物にも出会わなかった。
ずいぶんと寂しい夢だ。
こうなると隣をぴょこぴょこと忙しなく跳ねる長い耳の同行者の存在も悪くない。
「2つ目の記憶はパパとママの名前。3つ目は幼稚園のお友達。どうやら一つにつき1歳ずつ上がってるみたい。全部で12個なら、私は12歳なのかしら」
ふむ、と難しい顔で隣に座るイースターを見ると、彼は耳をぺたんと倒してとても眠そうな顔をしていた。
どうやら都合の悪い質問のようだ。
同行によってわかった事として、彼には話してはいけない事があるらしい。
それは私についてと、この世界について。
私の事を知っているなら回りくどい事などせずに教えてくれれば良いと思ったのだが、話そうとすると眠ってしまう。
この世界が夢であって夢でない場所というのについても訊ねると、耳をぺたんと背中に倒して眠そうな顔をするのだ。
「ほら起きて! また歩きましょう」
ゆさゆさと触り心地の良いお腹を揺らすと、イースターははっと目を覚まして懐中時計を確認する。
ここでそんなものを見たところで何になるのかはよくわからないが、彼にとっては大切なことらしい。
「いけない、遅れる! 遅れる!」
「何に?」
「…………さあ、なんでしょう?」
まるで本物の不思議の国のアリスの時計ウサギのような、とんちきな会話をするけれどそこになんの意味があるのかはよくわからない。
ただきょとんととぼけた顔のうさぎがいるだけだ。
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