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卵は後4個というところまで来ている。
5では引っ越しをした。
一家はマイホームを手に入れたのだ。
6で私は小学校に入学。
7でクラスの男の子に恋もした。
8で……私は学校で倒れた。
何故だか私は残りの4つを探すのが怖くなっている。
家に帰れるという言葉自体が嘘かも知れない。
信頼するには、イースターには秘密が多すぎる。
ここはどこなのか、夢じゃないのだとしたら……私はどうしてこの何もない場所に一人きりなのか。
もしかしたら本当の私はもう死んでいて、ここは死後の世界なんじゃないだろうか。
何も知らなかった時には全く起こらなかった不安が胸の底から湧いてくる。
「怖い……家族に、友達に会いたい……」
私はぼろぼろと涙をこぼした。
イースターは私の隣でおろおろとうろたえている。
「会えます。全部の卵を割れば必ず……」
「じゃあ教えてよ! なんで私はここにいるの? 夢でないならここは一体どこなの!?」
彼が答えようと口をもぐもぐさせると、耳がぺたんと倒れてゆく。
これもここの法則。
やはり喋れないようにされているんだ。
眠ってしまったイースターの横で泣いていると、いつの間にかそのすぐ近くに卵があった。
どうやら卵は探さずとも時間が来ると私の近くに届くらしい。
「これ、全部割ったら天国に行っちゃうのかな……」
9個目の卵を割らずにいようとしたが、地面に置いたままだった卵は勝手に割れてまた記憶が蘇る。
そこには難病に指定された私と、家族の絶望があった。
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