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Mission Start
私はふわふわとした足取りで一面の緑の中を歩いていた。
ここは見渡す限り草原で、時折木が生えてはいるけれど、それ以外何もない。
どこへ向かうともなく風の向くまま、流されるようにさまよっていると、爪先にコツンと何かがぶつかった。
しゃがみ込んで草の根を分けると、そこには一つの卵がある。
卵とはいうものの、なかなか洒落た模様が付いている。
私が不思議に思ってそれを眺めていると、うさぎが草むらからぴょんと飛び出して来た。
うさぎとはいえ、こちらもなかなかのお洒落さんだ。
背中側の裾が長い赤いジャケットに、襟のついたベスト、蝶ネクタイまで付けて二本の脚でお行儀よく立ち上がっている。
背の高さは私の腰のあたりまで……うさぎにしては大きいと思う。
「こんにちは、お嬢さん。君はエッグハントをご存知ですか?」
うさぎは懐中時計を取り出してちらりと時間を確認すると、カチャカチャと振り回しながらそんなことを訊ねて来た。
これは夢だろう。
うさぎは普通、服も着なければ喋りもしない。
訝しいながらもなんとなく相手をしてみた。
「春の復活祭にやる遊びね」
隠された卵を探す遊びだということを知っていたので、そのように答えてみる。
うさぎは嬉しそうに鼻先をぴすぴすと動かして頷いた。
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