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この世界の中の桜、全部が嫌い!大っ嫌い!毎年この色を見るたびに、切ない思いがこみあげてきて辛くてたまらなくなったから。もう七年という月日が経ったのだけれど。普段は少なくとも表面上は、何事もないような顔で過ごしているのに。この奇妙な色の桜を見るこの季節だけは、昔を思い出してしまう‥
自分が悪かったことは十分わかっている。思い返してみれば私は、本当に考えなしでぼんやりして、そのくせたまにとんでもないことをしでかしてしまう子どもだった。いくら七歳という幼なさだったとはいえ、一国の王女ともあろう者が‥
我がパーレル王国の国王であるお父様も、そのお父様を補佐していられたお母様も、常に国政でお忙しく他国へお出かけになって国を留守にされることも多かった。
お父様の優秀な後継ぎである、私より十歳年上のお兄様はお身体が弱く、いつも大切に蔵(しま)われているような遠い存在だったし、何年か前からは勉学のため遠い異国に留学していらっしゃった。
執政のドウズじいやや、身の回りの世話をしてくれる女官長のマーナをはじめとした女官たちは大勢いたけれど、私は寂しかったのだろう。
普段はおとなしい姫と言われていた私が時に突拍子もないことをしでかしたりしたのは、注意を惹きたかったのかもしれない、ごく幼ない頃は両親の、少し大きくなってからはリーゼル王子の。
リーゼル王子。七歳年上の、母方のまたいとこにあたる王子は、宮中の噂によれば気の毒な生い立ちであったという。隣国の高位の貴族だった、私の大伯父にあたる彼のお祖父様が政変に巻き込まれて国を追われ、そのご子息である王子のお父上と、お母上も早くに亡くなったので、王子は幼い頃我が国の宮中に引き取られて大きくなった。
長じるに従い勉学に秀で、剣術や馬術にも長け、控えめで温和な人柄の王子を大層目におかけになったお父様のお考えで、私がまだごく幼い頃に王子と私の婚約が決められたのだという。
控えめで温和な人柄ね‥お父様とお母様の前ではね!私が物心ついた時には、その水色の瞳は私の身近にあって私を見守ってくれていた気がする。とはいえ、あまり近付き過ぎない距離で、やや皮肉っぽいやり方で。
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