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薄い水色の瞳。
陽に透けると、端々が紺色を帯びる黒髪。私もお兄様も、お父様もお母様もキンポウゲ色の髪で、茶色の眼をしていたから、リーゼル王子の髪と眼の色は珍しく、何か神秘的な感じがした。
薄い水色の瞳は、本当に春と共に花開く桜の色だった。あの桜色の瞳が、いつもどこかで静かに私を見守ってくれている、という思いがあの頃の私を支えてくれていたのだと思う。
そして七歳の誕生日を迎えたあの春の日、私は取り返しのつかないことをしでかしてしまったのだった。
七歳という歳は、私の国では幼児期に別れを告げ、青年期に一歩近づく節目となる重要な歳。一般国民も、そして宮中でも、特別なお祝いをすることになっている。一の儀、と呼ばれるその祝いのために、お兄様も外国から帰っていらした。
美しい特別の式服を着て、豪華なネックレスや宝石をなどを身に纏うことになっていた私は、その儀式の重みなどにはあまり思い至らず快い興奮でウキウキウキしていた。いつも優秀なお兄様の影にいておまけのような自分が、みんなの注目を集めて祝福されるというこの稀な機会に夢中になっていたのかもしれない。
そして誕生日当日の朝、それは起こった。
早朝からの沐浴に始まり、さまざまなな細かい儀式を経て、これ又ややこしい式服の着付けが進み、ようやく装身具を着ける仕上げの段階に至った。
様子を見がてら、内輪での祝いの言葉をかけてくれる為だったのだろう、お父様、お母様、お兄様が部屋に入っていらした。そしてリーゼル王子も。
皆様も礼服姿である。大きな姿見越しに見ると、四人とも立派な姿だった。
どっしりと威厳のある物腰で、明るい色の豊かな顎髭が印象的なお父様、すらりとお背が高く、青白いほど色白でお美しいお母様、そのお母様によく似た面差しで、広い額にこぼれてくる巻き毛を払う聡明そうなお兄様。大きな窓から差し込む光に、長い黒髪の輪郭を紺色に煙らせ、水色の瞳でこちらを見て微笑んでいるリーゼル王子。
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