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誇らしい気持ちで四人の姿をみとめた後、私は自分の式服に意識を戻した。ちょうどテーブルの上の盆から、マーナ女官長が星型のブローチを取り上げたところだった。掌にすっぽり収まるくらいの、中央に白金剛石を嵌め込んだ滑らかな銀のブローチ。このブローチは国宝だと聞かされていた。
我が国で国宝と定められている宝石はみな魔法の力を持っているという。このブローチの力は何だったか。聞かされた気もしたがその時は気分が高揚していて気に留めなかった。ま、どうせ儀式の間胸に付けているだけだと思っていたし。
マーナは手にしたブローチを、私の胸の辺りに何度かそっと当ててみて少し迷っているようだった。式服のこととて、それぞれの装身具を付ける場所は決まっていたのだけれど、一番バランスよく見栄えよく見える位置を私のために考えてくれていたのだろう。
マーナが助けを求めるようにチラッと後ろに眼をやったのを見て、私は良いことを思いついた。こんな時こそ、お母様にお願いしてみよう。お母様はそれはそれはセンスが良くてお洒落な方だったから。
「お母様」
私は後ろを向いて思いきってお母様に声をかけた。
お母様は、横に立つお兄様の肩から下がる飾り紐を直してあげているところだった。
「お母様」
私はもうちょっと声を大きくして呼んだ。
お母様が首を傾げてこちらをご覧になった。
「お母様、このブローチを付ける場所が難しいの‥」
少し小声になって甘えるように言うとお母様は、
「マーナに任せてお置きなさい。マーナがすべて心得てくれていますよ」
と優しいお声でおっしゃって、またお兄様の方を向かれた。
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