桜を嫌いな理由

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          2  そうして転がり込んで来たのが、この世界だったというわけ。なぜか私は濡れておらず、桜の木立の根本にひっくり返っていた。あの、池に落ちる瞬間に見た薄ピンクに咲く桜の木の下に。  転がったまま呆然と桜を見上げていると、ヒョイと子どもの顔が私を覗き込んだ。  「おねえちゃんだいじょうぶ?」  「は?」  三歳くらいの男の子だった。奇妙に短く刈った黒髪で、鼻の下にうっすらと鼻水が光っていた。私が何も答えられないでいると、  「ほんとにおっちょこちょいだねぇ」  「大丈夫か?」  と次々別の声がかかり、目の前に大人の手が差しだされた。私はとりあえずその手に縋ってそろそろと起き上がった。  それがこの世界でのカゾクとの出会いだった。最初は躾の行き届かない召使いかと思った男女は、オトーサンオカーサンという、私の故国ではお父様お母様にあたるものであるらしかった。  そして最初に私を覗き込んだあの妙な幼い子はオトートというものだった。片時もじっとしておらず、常にその辺を汚し自分の身体もせっせと汚している奇妙な小さい生き物。故国でよく下男が中庭に放して飼っていた鶏竜のような。まあ角としっぽはなかったけれど。    
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