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ようやく帰れると足取り軽やかに歩いていると、隣りにいたシャルロット様が「きゃっ!」と小さく声を上げ、しゃがみこんだ。
「大丈夫ですか?」
ドレスの裾でも踏んでしまったのかしら? そう思って手を差し出すと、シャルロット様は頬をほんのりと赤らめ私の手につかまった。
「……ですね」
「え? ごめんなさい。聞こえなかったわ」
シャルロット様は私の手を支えにゆっくりと立ち上がると、誰もが目を奪われるような微笑みで、予想していなかったことを話し始めた。
「レイラ様は、嘘つき令嬢ですね」
「え?」
「刺繍もできない、ドレスも選べない、舞台も寝ていて本当は見ていないでしょう? 今日お茶会で話したことはぜーんぶ嘘!」
いったい何が目の前で起こっているのか、さっぱりわからない。シャルロット様の表情は、先ほどと全く変わらない。話す言葉が聞こえなければ、私達は楽しく談笑しているように見えるだろう。
実際に前を歩いていたカレン様とケイティ様はこちらを振り返った後に、そのまま館の方に歩いていってしまった。彼女の変わりぶりに驚き、差し出した手を引っ込めようとするも、反対にギュッと掴まれてしまう。
「でも私は本物です。刺繍も、お菓子づくりも上手で、そのうえ可憐で美しい。あなたの様な怠惰なニセモノじゃないの」
「……な、なにが言いたいの?」
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