180人が本棚に入れています
本棚に追加
ようやく絞り出した言葉も無かったかのように無視され、シャルロット様は嬉しそうに話を続ける。私は自分の耳に響くほど、胸がバクバクと鳴るのを聞いていた。
「ほーんと! 生まれつき、お金があるって得ですよね〜」
クスクス笑うシャルロット様は、つかんでいた私の手をグイっと引っぱり、耳元でささやいた。
「私、あなたみたいな人、大嫌いなんです」
今までと違う憎しみが込められた声色で呟かれ、背筋にゾワリと冷たいものが走る。
「は、はなして!」
握られた手を強めに引くと、彼女はフッと笑って手をはなす。私は強く引っ張ったせいで後ろによろめき、立っているだけでやっとだ。風がざわざわと強く吹き始め、言い知れない不安が襲ってくる。
「あなたより私の方が、グレッグ様にピッタリですね。私なら彼を本当に理解してあげられる。ニセモノのあなたより、私の方がグレッグ様を幸せにできるわ」
シャルロット様はフンと嘲るように笑った。しかしそれも一瞬のことで、彼女の表情はまたかわいらしい令嬢に戻る。呆然と立ちつくす私の前で、彼女はそれはそれは美しいカーテシーをして、「ごきげんよう」と去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!