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06. すれ違う2人
(どうして私の秘密を知っているのだろう……)
自分の部屋に戻ってからも、あの時何を言えば良かったのか考えていた。私の方が高位貴族なのだから、「失礼なことを言わないで」と言えば良かったのかしら。でもその場で刺繍をしてみろと言われたり、もっと詳しい舞台の内容を聞かれたらボロが出るだけよね。
それに「シャルロット様が私の婚約者を奪おうとしている」なんてカレン様達に伝えても、信じてくれるかしら? 私でさえあの豹変ぶりを信じられないのに。ましてあの場面を見てないなら、なにか勘違いされたのでは? と思われて終わりだわ……。
「レイラ? 大丈夫かい?」
その声にハッとして振り向くと、いつの間にかお父様が目の前に立っていた。私ったらお父様が入ってきたことにも気づかずにいたなんて。それにしてもお父様の表情も暗いけど、なにかあったのかしら。
「だ、大丈夫です。それよりお父様こそ、どうしたのですか?」
「ほら、この前グレッグ君との結婚、どうなってるか確かめろと言っただろう」
そうだったわ! 今日帰ってきたら聞こうと思っていたのに、あんな事があったせいですっかり忘れてた。でもお父様の歯切れの悪さに、嫌な予感がする。
「その、なんだか、グレッグ君には考えたい事があるらしくて、もう少し待ってほしいそうだ」
「えっ……?」
「ちょっと私にもわからんのだが、まあ、すぐにおまえにも話がいくだろう」
「グレッグが私に話を……?」
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