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「乙女の誓いだ。夫人お抱えの作家が書いている作品だから、話題に出すように」
「わかりましたわ」
(乙女の誓い、乙女の誓い、乙女の…… よし! 覚えたわ!)
私はいつもの様にグレッグから指示を受け、笑顔でハワード夫人を待ち受ける。
「レイラ! お久しぶりね! 最近見なかったけど、どうしていたの?」
「……少し体調を崩しておりまして、ようやく元気を取り戻したところです」
「まあ! お若いのに」
「ええ、でも療養中も今話題の……乙女の誓いという本に慰められましたわ」
「まあ! あなたも読んでいるの? あれ、実は私の――」
ふう、うまくいったわ。思い出せなくて少し妙な間があいたけど、これで大丈夫! あとはグレッグがうまくやってくれるから、隣で微笑んでいればいい。案の定グレッグは私から会話を引きつぎ、ハワード夫人と楽しそうに話し始めた。
「ハワード夫人、僕もレイラにすすめられて、乙女の誓いを読ませていただきました」
「まあ! あなたまで? 男性は読まないどころか、馬鹿にする方もいらっしゃるのに! 嬉しいわ」
「ええ、とても素敵な本で、夢中で読みましたよ。特にヒロインのシャーロットが婚約者に捨てられた後、健気に孤児院で働くところに心を打たれました。またシャーロットが襲われた時。121ページですね。現れた騎士団長のマルクのセリフですが――」
「え? え? そ、そんなに?」
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