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「ゆら兄、今度やって来る女は子連れなのか?」
思ったことはダイレクトに尋ねる。玉響は「ん?」という顔をした。
「朝の話ではそんなこと言ってなかったけど。子どもと一緒だったのかい?」
「いや、さっき廊下でガキと遭遇した」
「あーそのガキって幽玄とどっちが『ガキ』だったんだい?」
「なんだよ、それ」
そんな質問返しに、イラッとして幽玄は玉響を睨む。
そんな事に動じる兄ではない。クスクス笑いながら幽玄の感情の変化を楽しんでいる様子であった。
「たぶん俺よりも年下の女子だった」
「女の子かぁ。よくこんな所へ連れてきたなぁ」
感心しながら玉響がパソコンと向き合う。そして何かを操作していたと思ったら、モニターに何かが映し出された。
それは正門に設置された監視カメラの映像だった。
クルマが停車し、美しい女性が降りてくる。その後にちょこちょこ付いて出てきたのは、確かにさっきトイレに駆けて行った女の子だった。
「あーコイツだ!」
幽玄の記憶が一致し、声を荒げる。
「へぇーどうやら今日の来賓の付き添いで間違いないようだね」
玉響がモニターと睨めっこしながらふむふむと眺めている。
「というか、何でも知っているゆら兄の情報源はここからだったんだな」
モニターが筒抜けだったことを、幽玄は知らなかった。
覗き魔な感じがして、一歩距離を置く。
しかし、そんな事で動じる玉響でもない。
「幽玄、この世の中情報をどのように操るかが勝ち組と負け組の分かれ目でもあるんだよ。それ以外の要因もあるけど、それはイレギュラーだ」
そう言いながら、モニターの画面をパッパッと切り替えながら、屋敷全体を眺めていく。
もうそれだけで、この家で何があるのか把握している玉響には逆らわないと、幽玄は心に誓った。
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