Ⅰ後編【アナレプシス──回想】

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「阿紀良は別に付き合わなくてもいいんだぞ。ふっつーの人生送ればいいじゃん」 何気にそんな事を幽玄が口走る。 「は? ユウ、どうした? 今更なこと言うんだな」 阿紀良が『大丈夫か』的な視線で幽玄を見る。 今までそんなこと言われたことも無ければ、今更真っ当に生きようとも思わない。 何より、阿紀良は幽玄を気に入っていた。 だからこうやって世話をやいている。 最初は意志などない強制だった。それを受け入れる程の器が幽玄にはあったと、阿紀良は確信していた。 「別にオレは好きでここに居るから、心配される問題でもないけど」 そう答え自然と笑みが零れる。 捻くれている阿紀良は、幽玄になら哀れみであっても嫌ではない。 それより、何でそんなことを言い出したのかが不思議だった。 「何かあったのか?」 阿紀良には何かあった記憶はない。強いて言うなら今の出歩き禁止ぐらいであろうか──そんなことを考える。 「いや、そうでもないけど……。ゆら兄に釘刺された」 端的にそれだけ告げる。阿紀良は不思議そうに首を捻った。
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