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幽玄はそう言いながらキョロキョロ見回しながら、盗聴器や隠しカメラ等を探して回った。
思いの外、サラッと見るだけでは見当たらない。
(本当にここは単なる奴らのアジトっぽいところなんだな)
本気で監禁する気が無いのか、と呆れつつ幽玄は取り合えず座れそうな場所に腰を下ろした。
「それで、お前はなんであんな奴らに拉致られたんだ? 何かやらかしたとか、家が金持ちとかなのか?」
取り敢えず、状況を整理しようと事情聴取を始める。
「ううん、お庭で遊んでいたらボールが外へ出てしまったから、取りに行ったの。そしたら『個々の家の子なのか?』と聞かれ、返事をする前に──」
そこまで話して、フラッシュバックが起きたのか、ヒックヒックと泣き出してしまう。
(結局、目当ては俺らだったのか)
そんな気はしていたのだが、狙いは不動一家の子どもで、抗争絡みだと幽玄は悟る。
(不運なやつ)
そう締め括り、溜息を吐いた。
「分かったから、もう泣くな。あと少しでも生きていたいなら奴らの前では大人しくしとけ」
一応忠告とばかりに、念を押す。
こちらが暴れて向こうがパニックになることを避けるためだった。
「で、お前は誰なんだ」
幽玄は今更ながら目の前の子の名前すら知らなかった。
「私は──フユキ」
「フユキって、母親と来ているとか言うやつだろ?」
「う……ん、お母さんと一緒に来てる」
その答えを貰い、幽玄は『やっぱりそうか』と納得していた。
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