Ⅰ後編【アナレプシス──回想】

13/18

110人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
幽玄はそう言いながらキョロキョロ見回しながら、盗聴器や隠しカメラ等を探して回った。 思いの外、サラッと見るだけでは見当たらない。 (本当にここは単なる奴らのアジトっぽいところなんだな) 本気で監禁する気が無いのか、と呆れつつ幽玄は取り合えず座れそうな場所に腰を下ろした。 「それで、お前はなんであんな奴らに拉致られたんだ? 何かやらかしたとか、家が金持ちとかなのか?」 取り敢えず、状況を整理しようと事情聴取を始める。 「ううん、お庭で遊んでいたらボールが外へ出てしまったから、取りに行ったの。そしたら『個々の家の子なのか?』と聞かれ、返事をする前に──」 そこまで話して、フラッシュバックが起きたのか、ヒックヒックと泣き出してしまう。 (結局、目当ては俺らだったのか) そんな気はしていたのだが、狙いは不動一家の子どもで、抗争絡みだと幽玄は悟る。 (不運なやつ) そう締め括り、溜息を吐いた。 「分かったから、もう泣くな。あと少しでも生きていたいなら奴らの前では大人しくしとけ」 一応忠告とばかりに、念を押す。 こちらが暴れて向こうがパニックになることを避けるためだった。 「で、お前は誰なんだ」 幽玄は今更ながら目の前の子の名前すら知らなかった。 「私は──フユキ」 「フユキって、母親と来ているとか言うやつだろ?」 「う……ん、お母さんと一緒に来てる」 その答えを貰い、幽玄は『やっぱりそうか』と納得していた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加