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「自分の身は自分で守れ。仕えなかったら投げるだけでもいい。でもそれはどうしようもなくなった時だ」
「どうしようもなくなった時?」
「俺がお前を守れなくなった時だ」
万が一先に殺されてしまったら、たぶん高揚してフユキも殺すだろうということは容易に想像できた。
最期まで希望を持つことで変わる未来もあることを、幽玄は色々な人から教え込まれていた。
〝諦めたらそこでジ・エンドだからな〟
ある日、白夜はボコボコに叩きのめされた幽玄を見下ろしそう告げるとニヤリと笑った。
〝確かに諦めたら運もツキもそこまでだろうな〟
玉響は少し遠くで眺めながら、白夜の言葉を支持していた。
あの時は兄たちの不遜な態度に苛立ちしかなかったが、今なら何となく分かる。
「死ぬその時まで諦めるな。約束しろ」
幽玄にそう強めに言われ、フユキは理解し切れず不思議そうに首を傾ける。
「死んじゃうの?」
「あーうーまぁ、そうならないように足掻いてはみるけど」
どう言ったらいいのか言葉に詰まり、幽玄が悩みだした。
だが、それをフユキは見ながら安堵する。
幽玄の言葉の内容はよく分からなかったが、自分を真っすぐ見てくれる幽玄には安心が持てた。何となく大丈夫な気がしてくる。
フユキはその言葉を受けてコクンッと頷いた。
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