②奇妙な登校

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「ユウ、すまんっ! なんかまた〝ラフレシア〟で被害被ったんだろ!」 旧校舎へ入るや否や、阿紀良は深く頭を下げて謝罪する。 そんな阿紀良の態度の変化に動揺することもなく、幽玄は鼻で笑った。 「あー確かに。えらい迷惑を被ったが、別に問題は無い」 溜息をつき、幽玄はメガネを外す。 髪をかき上げ、クラスメイトの前では絶対見せない表情を晒した。 これが幽玄の素の顔である。 「お前がこうやって高校生活の表舞台で目立ってくれるから……俺はバレなくて済む」 「お目付け役の幼馴染みとしては、言われたことは遂行するさ」 そう、幽玄はこの幼馴染である阿紀良を引き摺り込み、今回高校への再入学を果たした。 事の発端は……17歳の時に幽玄が前の高校を退学したことにある。 問題が浮上し、最終的に自主退学ということで手打ちとした。そして高校2年で幽玄は学生を辞めた。 そのまま気ままに生きようと思っていたら『学生じゃないなら家業継げ!』 と組長である父親と大喧嘩を繰り広げる。そして最後に幽玄は「それなら学生に戻ってやるわっ!」と捨て台詞を放ったのだ。 それを素直に了承する組長ではない。 「学生に戻りたいなら条件がある。身元がバレたら即、学校を辞めて家に入れ」 というものである。 幽玄も頭に血が上っていた。 「わかったわ! 覚えておけよっ!」 と売り言葉に買い言葉で話を締め括り、互いが了承した。
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