Ⅰ後編【アナレプシス──回想】

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「それにしてもこれじゃあ動けないし、待ち……か」 連絡しようにも何も持っていない。 しかし、特に幽玄は焦る様子も困る様子も無かった。 首に掛かったネックレスに触れながら、気にするそぶりも見せなかった。 「……怖くないの?」 そうフユキに聞かれ、幽玄は「別に」と素っ気なく返す。 「一応コレがあるから。そのうち誰かが来る」 そう言って触れていたネックレスを見せた。 「それ……なに?」 「もしも時用の御守りみたいなものだ」 「おまもり──……?」 フユキはたまによく分からないところで、躓く傾向がある。 今回はその御守りが引っかかっていたようだった。 幽玄はぷっ、と噴き出し「変わってるよな、お前」と付け加える。 クスクス笑っていた幽玄だったが、ふっと笑いを止め人差し指を自分の口に当てるとフユキに「しーっ」と静かにするように伝える。 フユキはビクッとして、只々首を縦に振った。 微かに響く足音に耳を傾ける。 その足音から数名がこちらに向かっていることは理解できた。 幽玄は眉間にしわを寄せると、チッと舌打ちする。 「ハズレ……か」 そう呟いたのをフユキは見逃さなかった。 「いいか、何があっても泣き叫ぶな、暴れるな。約束しろ」 幽玄が小声でフユキに念押しする。 どうしてそんな事を言うのか分らないフユキだったが、何故か幽玄の言葉はすんなり納得できる。 「わかった」 そう言うと、フユキはもう既に泣きそうな顔をしていたが、涙は流さず俯いていた。
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