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「それにしてもこれじゃあ動けないし、待ち……か」
連絡しようにも何も持っていない。
しかし、特に幽玄は焦る様子も困る様子も無かった。
首に掛かったネックレスに触れながら、気にするそぶりも見せなかった。
「……怖くないの?」
そうフユキに聞かれ、幽玄は「別に」と素っ気なく返す。
「一応コレがあるから。そのうち誰かが来る」
そう言って触れていたネックレスを見せた。
「それ……なに?」
「もしも時用の御守りみたいなものだ」
「おまもり──……?」
フユキはたまによく分からないところで、躓く傾向がある。
今回はその御守りが引っかかっていたようだった。
幽玄はぷっ、と噴き出し「変わってるよな、お前」と付け加える。
クスクス笑っていた幽玄だったが、ふっと笑いを止め人差し指を自分の口に当てるとフユキに「しーっ」と静かにするように伝える。
フユキはビクッとして、只々首を縦に振った。
微かに響く足音に耳を傾ける。
その足音から数名がこちらに向かっていることは理解できた。
幽玄は眉間にしわを寄せると、チッと舌打ちする。
「ハズレ……か」
そう呟いたのをフユキは見逃さなかった。
「いいか、何があっても泣き叫ぶな、暴れるな。約束しろ」
幽玄が小声でフユキに念押しする。
どうしてそんな事を言うのか分らないフユキだったが、何故か幽玄の言葉はすんなり納得できる。
「わかった」
そう言うと、フユキはもう既に泣きそうな顔をしていたが、涙は流さず俯いていた。
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