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Ⅱその裏幕の足音
横目にフユキを見ると、やはり肝っ玉が据わっているのか、嬉しそうにそのおにぎりを頬張る。
(まじか! こいつ……)
本気で幽玄は自分の目を疑ったが、やはりフユキは嬉しそうにそれを食べていた。
「俺のも食べるか?」
小声てそう尋ねると、フユキは最初心配そうに幽玄を見る。
「でもそれ食べたら……」
「別に俺は腹空いてないから問題ない」
それは本心だった。
空腹よりも、この場の状況把握から相手の動き、救出されるための最善策など考えていたら、空腹どころではなかった。
食欲のあるフユキを見て安心したが、だからと言って命の保証ではない。
食べ物を与えられていることに対して、生かされていると同意語ではない。
いつ死は襲い掛かって来るか分からない。
だから、できるだけ長らえることが重要であった。
「それにしても屋敷に居たガキ攫ってきたが、こいつ等不動のところのガキなのか?」
一人がチラッと幽玄とフユキを見て質問する。
「それだな、実際あんなところに居る子どもなんて御子息様ぐらいじゃねーの?」
他の一人がケラケラと笑いながらそう締め括る。
何故かその場の者は全て賛同していた。
(アホか!! こいつらの頭何なんだよっ! 訳分からねーところで締め括るんじゃねぇよっ!!)
幽玄はビックリしてそんなツッコミを入れてしまった。
そんなアバウトな情報で命懸けているのである。小学生だが、それでも幽玄からしてみたらこんなことは考えられない。
(だが、こんな奴だから助かっているのか)
幸運だと幽玄はほくそ笑む。
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