Ⅱその裏幕の足音

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どうやら御子息という言葉もよく分かっていないらしい。 (俺とこいつ、どちらがその〝御子息〟というものか分かっていない) そう思うと勝機がチラつく。 てっきり自分が息子だと分かっての誘拐だと思っていた。 実際はお粗末な計画に曖昧な情報──幽玄でもなんとかなりそうな勢いだ。 だが、こちらにはフユキがいる。下手に動いて何かあると色々面倒だと感じた。 一応母親というものは来客という扱いだった。その娘に何かあれば『ごめんなさい』で済ませられる問題ではない。 それは小学生の幽玄でも理解していた。 この場合、尻拭いに自分が買って出る必要はないかもしれないが、幽玄自身がそれでは納得できなかった。 不動家の人間がそんな無責任なことはできない。 このままこいつらは大人しく騒いでおいてもらうのが理想だった。 「そう言えば血脇(ちわき)さんには伝えたのか?」 ひとりのチンピラがケタケタ笑いながら尋ねる。 幽玄はピクリッと肩を震わせた。 (な……に!? 血脇って言ったか!!) その名前を幽玄は知っていた。 (この世界で血脇なんてそうそう居ないはず。どういうことだ!) 動揺して冷や汗が流れ落ちる。 幽玄は、今朝もその男にあったばかりだったからだ。
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