Ⅱその裏幕の足音

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玉響は普通の人と脳の構造が違うらしい。 何時も意味不明な事を言ったり、人と違う言動なんて日常茶飯事であった。 もう人外の範囲だと、誰しもが認識していた。 金を生む金のガチョウなのは確かなのだが、代償なのか玉響は生まれつきカラダが弱く、いつ死んでもおかしくないと、医師の太鼓判もあった。 その事があり、組長である父親は玉響の好きにさせることにしたのだ。 兄弟や父親との関係は悪くない。 玉響も不満が無いのか、気が付けば玉響なりに家業に貢献するようになり今に至る。 幽玄にとっても玉響は信頼している兄だった。 その玉響が血脇と一緒にいる場面を思い出せない。 (いや、ゆら兄はヒッキーだからだよっ!) そんな自分自身で言い訳や理由を考えていたが、それは意味を成さないことに気付く。 (ゆら兄は敢えて出てこなかったというのか?) よくよく考えれば、屋敷のセキュリティカメラを盗み見していたお子様である。 ワザと出会わないようにすることも朝飯前であろう、そんな考えに幽玄は行きついた。 白夜に至っては、全く警戒することも無く血脇と接していた。父親もである。 だが……。 (こいつが黒幕というやつなのか) 理由も経緯も分からない。思惑なんて想像つかない。 だがこれが現実だった。 (万が一ということもある。本人かどうか確認してから──か) そう思うと、自然と今までの動揺が嘘のように引いていく。 もう少ししたら来るという話を男たちがしていたことを思い出し、刺激せず大人しくしておこうと目線を下げた。
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