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ワイワイ騒いでいる集団の隅の、ごみの中で幽玄とフユキは大人しくしていた。
最初はフユキがゴネるかと心配していた。最悪見捨てようと思っていたぐらいだったが、思っていたことはなく、大人しくしていた。
ちょこん、と三角座りをして蹲る。たまに顔を上げては周りを伺っている。
その様子に幽玄は感心さえしていたのだ。
そんな時間も束の間だった。
「ヤベッ、血脇さん着いたらしいぞ!」
それを号令に一斉に緩んでいた場が引き締まる。
こんなゴロツキでもそうさせる程の男なのか、と幽玄は顔を上げ警戒した。
(いや、あの血脇なら俺だとバレたら殺されるかもしれない)
どう考えても、致命傷なお子様だと幽玄でも自覚していた。下剋上か何か画策しているのである。危険因子は何でも排除するであろう。
できればその前に助けが来ることが望ましかった。
(どうも間に合いそうもないかもな)
何となく覚悟を決める。幽玄は自分の先の事よりも隣のフユキの事が心配だった。
(こいつは俺よりも殺される確率は低い……のか? 交渉材料にしそうだが)
大体、何故一番厄介な『不動家の子ども』をターゲットにしたのか。そこまでは関与していなかったのか。
実際外からやって来る足音は焦っている様であった。
ドアがバタンッ、と勢いよく開く。
そしてドカドカと入ってた足音に、できるだけ顔が見えないように幽玄は膝を抱えて俯く。
だがそんな抵抗など空しく、幽玄は髪を掴まれ持ち上げられた。
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