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「これは──どういうことだ!?」
その男の声は焦っているようで声を荒げ叫ぶ。
一方幽玄は、髪を掴まれたまま顔を無理やり上げさせられる。
幽玄は覚悟を決め、その男と対峙した。
確かに──その男は血脇であった。
自分を持ち上げている男は力を緩めるそぶりは見せない。
目の前で目が合った幽玄は「朝振りだよな、血脇」とニヤリと笑う。
血脇は目を逸らすことはなく、只々静かに震えていた。
言葉も出ないようである。阿修羅の様な形相からもそれが怒りからだということは、誰でも手に取れた。
「……どういうことだ。とういうことなんだ!!」
血脇は顔を真っ赤にして、踵を変えると傍の男の胸ぐらを掴み上げた。
「命じたのは不動のガキじゃない!! あの女のガキだ!!」
(俺じゃない!? こいつか!!)
想定外の血脇の言葉に、幽玄も動揺する。
(てっきり間違えられて拉致られたんじゃないのか! 俺の方か!!)
本命は自分ではなかったことに、今までの考察が根底から崩れていくのを感じていた。
「これは困った。流石に幽玄さんがここに居ては儂も困る」
血脇が困った口ぶりをみせるが、結論は決まっている。表情には全く迷いが無かった。
そして、幽玄の首筋にぶら下がっていたチェーンを引きちぎると、床に落とし粉々にしてしまう。
「既にバレているのは承知よ。助けが来る前に証拠は何もなくなるけどな」
そう言いながら、クククッと喉を鳴らして笑みを零す。
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