Ⅱその裏幕の足音

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幽玄の中で何かが弾ける音がした。 それは幽玄の中でも感じたことの無い世界の──何も感じない空間。 今までそんな世界が自分の心の中にあったことすら知らなかった。虚無の空間。 その世界が幽玄を飲み込む。 “俺も舐められたものだな” 「──何か言ったか?」 幽玄の独り言とも言える呟きに反応した血脇だったが、内容までは聞き取れなかった。 返答の無い無言の幽玄に対して、想定外の出来事も重なりイライラしていた血脇が再度幽玄に掴みかかろうと腕を伸ばす。 ──……パシュッ!! その腕は、幽玄を掴むことはなかった。 「やっぱり、人の死とは呆気ないものだな」 トリガーを引いた幽玄は、顔色一つ変えることなくそう告げる。 その瞳には──人の感情は全く浮かんでいない、只々底の無い闇が映り出されているだけだった。 「こいつ本当に殺りやがった──……!?」 いくら組の根幹である本家の御子息であっても、こんなガキが人など殺せるとは誰も思っていなかった。 全くの想定外に、動揺が広がる。 動揺がパニックとなるのに時間はかからなかった。 襲われる獣が足掻くかのように、咄嗟に掴みかかろうと幽玄に対して数名が腕を伸ばす。 そんな行動を幽玄は笑いながら眺めていた。 そしてその手には……まだ拳銃が握られている。 ──……クスッ。 口角が上がるのと、幽玄の指が再度トリガーを引くのはほぼ同時だった。
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