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Ⅲ救出劇
◇
──……ドォォッン!!
部屋が揺れるかのような振動と響く破壊音。
そして何か叫びながら雪崩れ込む足音。
「幽玄! おいっ!! 大丈夫か!?」
特攻隊の突入に続き、最前線に立っていたのは長男である白夜だった。
襲撃に対して完全なパニックとなっていた残党たちは空しくも抵抗を試みるが、それを呆気なく屍と白夜が変えていく。
飛び込んだ部屋には幽玄が見当たらなかった。
だが、直ぐに配下たちが声を上げる。
その声に引き寄せられるかのように飛び込んだ浴室で、白夜は言葉を失ってしまった。
血の海と化した浴室内。
一瞬、嫌な予感が白夜の脳裏を横切ったが、それは事実ではない事を認識する。
そう、その中心に笑みを浮かべ立っていたのは幽玄だった。
「幽玄──? おい、大丈夫かっ!!」
その場が尋常でない事実、そしてその中で笑みを浮かべている弟に対して、白夜は嫌な勘が過る。
瞬時に場の状況を把握していく。
屍が転がっている。血塗れのその死体は、全て急所を撃ち抜かれていた。
迷いがないその貫通された死体をサッと確認し、その原因を探る。
直ぐにその原因は、幽玄が持っているものだと容易に想像は付いた。
「お前がやったのか?」
白夜は少し心配になり、幽玄との距離を慎重に詰めていく。
いくら兄弟とは言え、白夜の記憶ではまだ幽玄は人を殺したことはない。
これが『初仕事』だとすれば──妙なテンションから何を仕出かすか分からない危うさを秘めている。
安易には近づけない状況であった。
幽玄から返事は無かった。
ただ、クスクス笑いながら意識がトランスしている幽玄が──そこに立っていた。
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