②奇妙な登校

8/10
前へ
/145ページ
次へ
『両親は蒸発。兄がいるが不倫の慰謝料で吹っ掛けられ、支払いを長女が引き受けているため。ちなみに……』 メッセージには続きがあった。 『慰謝料を吹っ掛けているのは、不動一家の構成員である』 そんな締め括りで終わっている。 「あーカモにされたのか……」 何となく経緯が理解できて、笑いが込み上げてくる。 世に言う弱者に対する奪取の成れの果て、であった。 それがこの社会の闇である。 そんな中で生きている幽玄には全く関心がない。 ただ、その兄について少し気になった。 兄の身辺について問うと『今年19歳。高校卒業後、家を出て女の家を点在しヒモ生活』と返答が届く。 まぁ、それもアリだ。幽玄が言うのも何だが、斑雪の兄は典型的なクソだということは理解できた。 最後に『支払いはいつもの方法で』とだけメッセージが届き途切れる。 「情報屋もたまには負けてくれればいいのに。大体実験台になったのは誰だと思ってんだ」 そんな事を口走りながらスマホの画面を切る。 普段はショットバーのママをしているランだが、かなりヤリ手の『情報屋』でもあった。 幽玄にここまで好き勝手にして、頚と胴体が繋がっているのは、ひとえに幽玄の親父である組長の庇護があってのことだった。 情報屋でもあるランは、他にも何かネタを持っていそうだが幽玄がそこまでこのクラスメイトに貢ぐ義理は無い。 スマホを手に持ったまま、机の上にうつ伏してしまう。 気が付けば夢の住人と化していた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加