序章【いつもの日常はじまりは唐突】

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確かに五体満足なのは見て受け取れたが、とても丁寧に扱われたとは言い難い状態である。 呼吸苦からも、疼痛がかなり体の至るとこで悲鳴を挙げているのが、よく分かる。 「俺はこれでも慈悲に溢れた聖母と呼ばれているんだよ、ほら」 学ランの青年はそんな事をサラッと言い放ち、アキラに向かって手を差し出した。 その手に乗せられた一挺の拳銃。 それを握ると、まじまじと見ながら「ふーん」と言い、どうでも良さそうな感想を態度で示す。 「お前ってホントこれ好きだよな」 「ベレッタが好きなんだよ」 そんな熱く語ろうとしたアキラの口は遮られる。 それ以上は敵わん、と言わんばかりであった。 「まぁ……」 そう言うが早いか、掛かっていた指は動きトリガーは引かれる。 ──……パアンッ! 響き渡る銃声、迸る血飛沫。 歪な頭部のまま崩れ落ちていく骸。 残された静寂と、生々しい血のニオイ。 「いいんじゃね?」 銃を再度マジマジと見つめニヤリと笑う。 「そろそろ本腰入れて代紋継げばいいのに」 アキラは溜息交じりにそう進言する。 「別に俺はそんなものに何の価値も見出せてない。面倒くさいだけだろ」 返ってきたきた答えはシンプルだった。 想定内で苦笑しか出ない。 「そう言いながら、やることはちゃんとやってるくせに」 そう言い、転がった骸を顎で指す。 「何処の家でもお手伝いとかするらしいじゃん。これも一応『家のお手伝い』だよ。自由にさせてもらう為の代償だ」 そして、傍に控えていたものが「お疲れ様です」と声を掛け、学生服の上にコートを羽織らせる。 「おい、後は任せたぞ」 「はいはい。承知いたしました、御子息様」 アキラはクスッと笑い深々と頭を下げる。 その嫌味に対し、先程使った拳銃を投げ返した。 「その言い方、次は無いと思えよ」と、釘を刺しその場を去った。
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