④愉快でウザい兄貴たち

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④愉快でウザい兄貴たち

❖ ❖ ❖ ❖ 幽玄はその家に帰ると、重々しい門構えにどう考えてもカタギではなさそうな男が立っている門を、何食わぬ顔でくぐった。 誰も咎めるものはいない。 見張りは最敬礼で「ご苦労様ですっ!」と声を掛け視線を落とす。 結局は想定外ばかりのことで、疲れ切っていた。 昨日はまともな食事も風呂さえ入っていない。 女のところへ寄る選択肢はとうに吹っ飛び家路へ就いたのであった。 フラフラになりながら、玄関まで着くとそこには、私服に着替えている阿紀良が出迎えてくれる。 それと一緒に有り得ない人物、長男である白夜(びゃくや)もスーツ姿で立っていた。 「あれ、白兄がご帰還とか珍しくないです?」 「いや、愚弟の朝帰りについて事情聴取を……」 そう心にもない事を言いつつ、見ると笑いを堪えている。 咄嗟に幽玄は阿紀良に視線を遣ると、「オマエっ!」と睨みつけた。 「いえ、オレは事実を報告したまでだよ」 阿紀良は何食わぬ顔をして、視線だけは明後日の方を向いている。 「そんなにアキラを責めるな。たまたま帰ってたらお前が居なくて、キョドってるアキラ見つけて聞いただけだ」 「白兄が帰るなんて滅多にないだろ! なんでこのタイミングなんだ」 幽玄は訝しげに、その兄を睨む。 28歳になる長男は、その手腕で経営全般を一気に請け負っていた。 かなりヤリ手で、敏腕社長のこの男に睨まれたら──成仏すらできないとまで言われている。 白夜自身も仕事の方が楽しいらしく、実際に屋敷には滅多に帰っては来なかった。 それが今、目の前に立っているのだ。
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